損をして得を取る投資法とは?ブラックスワン回避法を読んで
新人の頃、私のトレーナーは損をして得を取れ的な感じで、回り道をしてもいいからとにかくやれということを何も説明せずに、ただただ作業を私に押しつけていました。
無論、押し付けられた作業に関してはそれぞれ意味があったものですし、5年以上経った今となってそれぞれに意味があったことがわかるのです。でも、当時はそんな余裕がなくて、損をして得を取るような状態にすらならずに消化不良を起こした結果、私の精神がおかしくなりかけたんですね。
だから、新入社員や20代前半の社員が来たときは、何でこの作業をやるのか?とか、この部分は今やっとけばいずれ役立つっていうことを割と正直に伝えるようにしています。自分がされて消化不良だったことはなるべく繰り返さない方がいいかなと。
これも30代になって損をして得を取るとか、今やっとけば後で楽になると言うのが業務の経験でわかるようになったからだと思うのです。
同時にスポーツなんかでも、何故この若手選手をここで使うのか?とか、跳ね返されるのに同じようなコーナーキックを何回も蹴るのか?ということに対して意図を読むようになってスポーツ観戦でも視野が広がった気がします。
ふと思ったのですが、こういう損をして得を取れという思想って、ようは割安になった株や下落している株に投資をして、後々上がった時に利益を取るということで投資にも通じるなと考えたのです。
そんな損をして得を取る投資的な考えをまとめたのが、ブラックスワン回避法 (ウィザードブックシリーズ)です。
オーストリア流の経済学の説明に始まり、投資戦略でなぜ迂回的な順路を通る必要があるのか、それらの話を解説している本です。また極端な株式の下落(ブラックスワン)から利益を得る戦略について書かれていますので、今の好調な相場の時に読んでおいて良かったと思いましたね。
オーストリア学派とは?
本書の著者はヘッジファンドのマネージャーであるマーク・スピッツナーゲルによって書かれたのもので、ブラックスワンという本を書いたナシーム・タレブとも関係が深いのでこのタイトルになった可能性がありそうです。
マーク・スピッツナーゲルはオーストリア学派を信奉しています。オーストリア学派は、アダム・スミスのような経済への政府の介入をなるべく小さくすることを主張する学派です。
そのため現行のFRBのような金融緩和政策には批判的でFRBの歴代の総裁に対して皮肉を可成り言ってます。また、孫氏や戦線総論など歴史的なことを絡めながらオーストリア学派の正当性を説いているため、ここまで言わんでもと思うところもあります。オーストリア学派から見た経済の歴史を知るのにも役立ちます。
市場が本来自然であるべきという思想が根本にありますので、自然が大きく歪んでいる時や全く歪みがない時のみ投資するという投資戦略に至るのには納得できましたね。
市場がゆがみを利用して投資する
「迂回的に取組む」という考え方を本の3分の2ぐらい使って説明していますので、損をして得を取るという思想には共感を覚えました。今相場が好調だからこそそう思ったのもありますけど。
ある意味、バフェット流の投資手法にも通じるものがあり、本の中でもバフェットやグレアムに関して言及する個所がいくつかあります。そのため先進国で成長が鈍っても、世界全体で成長が続けば儲けることが可能な「儲かる仕組み」を確保したバフェット流のグローバル企業への長期投資を推奨していました。
これ以外にも興味深い以下の事象が紹介されていました。
- アメリカ企業の株式の時価総額をその純資産で割った(トービンの)株式Q比率であらわされる年の初めのMS指数が高い時ほど年間リターンは低い。
- 各10年の初めに、75%以上のROICを達成している企業は最後まで高いROICを保ち続ける。
- ジークフリート戦略:高いROIC(投下資本利益率)、ファウストマン比率が低い
- 1978年から毎月、直近のROICが100%を超える企業のうち、ファウストマン比率が最も低いもの(さらに規模と流動性とでスクリーニングを行う)を買い、やがて要件を満たさなくなったら手放していく(金融部門や怪しいバリュー株は除外)するポートフォリオは、S&P500を大きく上回るパフォーマンス。
ROICの話は結構興味深いなと思いました。この指標ならば色んな企業に適用できそうですし。
他にも暴落時・暴騰時に儲けるためのオプション戦略において問題となる「何も起こらない長い期間」のコストをどう支払うかを、オプションの組み合わせで解決する手法が書かれてありました。オプション戦略を取る人にはこの部分も参考になるかもしれません。
上記のような投資手法も有効ですが、この本から学んだこととしては「迂回的に取り組む」という思想から、相場が大きく歪んだ時に「損をして得を取る」投資を行うということですね。少々皮肉っぽい内容ですが、投資をある程度経験した人が投資哲学を知るという意味では有意義な本ではないかと思いました。


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