行動経済学はいかにして生まれたのか?かくて行動経済学は生まれり
今年のノーベル経済学賞は行動経済学の第一人者で、行動経済学の逆襲等の著作がある、リチャード・セイラーが受賞しました。
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日本でも大江英樹氏の「投資賢者の心理学」や中室牧子氏の「学力の経済学」が売れていますし、時代の流れ的に行動経済学が評価されたということでしょうね。
そんな行動経済学に関しては今年興味深い一冊が出版されました。
リチャード・セイラーは法律学者のキャス・サンスティーンとともに、映画化もされた、マネー・ボールに関して、「マネー・ボールが扱った現象は興味深いものだが,なぜ野球のプレーヤーの市場が非効率なのかについての深い理由を著者は知らないようだ。その説明は何年も前にイスラエルの心理学者カーネマンとトヴェルスキーによってなされている」という内容の書評を書きました。
するとマネー・ボールの著者、マイケル・ルイスはこの指摘に衝撃を受けて、二人のユダヤ人心理学者ダニエル・カーネマンとエイモス・ドヴェルスキーについて調べてまとめあげたのが、かくて行動経済学は生まれりです。
中東戦争の経験をもとに行動経済学は生まれた
ストーリーは時系列をおいつつ、住む場所や大学を変わるたびに当時近くにいた多くの人の証言を取り上げていていて、最後まで読者の興味を引き続ける構成になってます。アメリカでベストセラーを多く書いてきた著者の実力がよくわかります。
- 投資や人物評価などの不確実なことを目前にしたとき、人はどのようにして結論に辿りつくのだろうか?
- その道の専門家であっても判断を誤り、専門家ではなくデータに頼る人の踏み台にされている。その判断ミスをする人の頭の中では、何が起きているのだろうか?
という疑問を解き明かすためにまとめられた本ですから読み応えがあります。そして、中東戦争やそれまでの人生経験をもとに、
「人が意思決定を行うときは効用を最大にするのではなく、後悔を最小にするものだ」
「経済モデルに心理学的洞察がないことに幻滅していた」
という観点から研究が進んだことがわかります。
また、二人の間の格差が発生していき、やがて互いに複雑な感情抱いて共同研究解消、そしてドヴェルスキーの死までを描いていてかなり深堀されています。
人の直観は間違える
カーネマンはドヴェルスキーの死後、ファスト&スローでファスト=速い思考=直観的・感情的 と スロー=遅い思考=論理的・理性的この二つのシステムで、日常的な意思決定をしていることを説明しました。
ダニエル・カーネマン 早川書房 2014-06-20
結局人間は直観的や感情的な速い思考の方で判断をしがちですので、エラーをしやすい傾向があるということです。
人の直観に影響を与える、バイアスは時にはいい方向に転ぶこともありますが、それが悪い方向に転んで悲惨な方向に転ぶこともあるわけです。
私の競馬なんか典型例ですね。前儲けさせてもらった馬でスプリンターズS外して、春ハナ差で馬券外した2頭の組み合わせで秋華賞が当たる。仮に後者が当たっていたとすれば違ったバイアスがかかって結果も違っていた可能性があります。
経験則に基ずく直観も間違えるということが、本を通して理解できましたので、今後の自分自身の行動も考えていく必要があるなと考えさせられました。
間違える直観をデータと論理的・理性的な思考も組み合わせて、損失・後悔を最小化する
カーネマンとドヴェルスキーが研究していた30年前と比較して、何が変わったかというと一般人がふれれるデータが増えたということなんですよね。
もちろんビッグデータとは対極にあるにある人間の行動の方が正しい場合もありますが、データの裏付けや論理的・理性的な思考を少しでも直観に組み合わせて、損失・後悔を最小化していくことが重要かなと考えました。
投資の場合も個人的には今後、サテライトとして個別株を行いたいと考えていますが、結局人の直観って外れるわけです。
データと論理的・理性的な思考を組み合わせて判断すると同時に、自分にとって全体の総資産の内、損をしてもいい金額を決めてから投資するのがベターだなと。
自分の判断が本当に正しいのかと、判断ミスが発生する前にブレーキをかける癖をつけるという意味でも読んでよかったと思える一冊です。


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