ビットコインは終わり、ブロックチェーンが世界を変える?アフター・ビットコインを読んで
年末年始の帰省は合計6冊の本を持ち帰って、移動などの時間で読みましたが、だいたいのぞみ東京→福岡間で3冊700ページ後半ぐらい読めるということがわかりました。
6冊ともいい本でしたので、追って記事にして紹介しようと思いますが、年始一発目の本となるとやはりパンチのきいたものにしたいと考えるものです。
となると昨年良くも悪くも話題になったビットコインに関する本にしようかなと。ということでアフター・ビットコイン: 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者の内容について書こうと思います。
日銀出身の決済システムの第一人者である中島真志氏が、ビットコインとブロックチェーンの仕組みと展望について書いた本です。ビットコインを賞賛する側の人たちからしたら、既存の中央銀行側の人間が悪口言ってると感じるかもしれません(Amazonのコメントを見たら、余りにも反中央銀行体制、非中央集権的寄りの人で低評価の人もいるので、ビットコインにややバブル臭を感じる)。
自分の意見をいいますと、ビットコインは破たん国家(例:北朝鮮、ベネズエラ、ジンバブエ)で通貨の価値が崩壊している国への送金には反体制派の外国からの支援も含めていい方法だと考えます。一方でぼんやりと把握している仕組みで特に気になってたのは以下の2点でした。
①セキュリティの問題(金融詐欺、匿名性も含む)
②決まっている総発行量の壁にぶち当たる可能性
疑問点に思ってた以外のビットコインの問題点、およびブロックチェーンの仕組みに関してわかりやすく説明されていて、ビットコイン関連で一番売れているだけあるなと思う内容でした。
ビットコイン、ブロックチェーン技術の2点で個人的に印象に残ったことをまとめてみました。
ビットコインの仕組みと、限界や懸念点
まずは自分が当初から懸念として考えていた、①セキュリティの問題、②決まっている総発行量についてまとめます。
①に関してはP2Pなどを使っているわけですが、P2PというとWinnyを思い出す世代としては、新人研修時代に同期が新人研修期間に配布されたPC(研修課題のために家に持ち帰り可)にWinnyを入れてウイルス感染という事例を見てたので、セキュリティ大丈夫?と考えていました。
解説されている仕組みを読んで想像以上に取引等のセキュリティはしっかりしている印象をもちました。改ざん耐性や可用性に関してはビットコインの評価は個人的に上がりました。
しかし、結局仮想通貨詐欺やランサムウェア、マネーロンダリングに使われてしまっている現状、通貨の匿名性(誰がどこで使うかがわからない)の問題は超えれるかわからないけど壁になるのではないかと感じました。
問題は②ですね。この本を鵜呑みにしていいのか?と思うくらいの情報なのですけど、ビットコインには約2,100万枚という総発行量が予め定められていて、2028年98%発行される状態となりますので、この通りで行くと発行量の壁にぶち当たります。
もちろん対策を立てる可能性もあります。しかし、ビットコインの中の人たちが、ビットコインの処理能力をめぐってふたつのグループに分かれてしまった分裂騒動の状況を見ますと、解決できるのかなと。
この2つの項目を確認できただけで、現状の過熱して炎上しそうな状況では手を出すものではないという結論に至りましたが、それ以外にも問題点として以下の項目があげられていました。
- 上位1%未満の保有者が90%のビットコインを所有している。
- マイニング(採掘)している主体が中国に偏ってる。
- マイニングのリワードが半減、あるいは発行上限に達することでマイニング(取引の承認)に対するインセンティヴが失われる。
- ブロックサイズの問題とそれに伴う分裂騒動の繰り返し。
これに加えてもともとのビットコインの価値の問題もありますし、バブルが起きると国による規制で上記の4つの問題点と複合的に絡む可能性があります。
仮想通貨に興味を持っているが良くわからないという人はこの部分をよく読むことをお勧めします。
ブロックチェーン技術の応用で始まる、国家デジタル通貨、国際送金、証券決済
この本の柱はビットコインだけではなく、ブロックチェーン技術の応用について書かれている後半の章の内容です。
既に各国の中央銀行(日銀も含む)なんかでも実証実験は行われているそうです。まだ技術的な課題も結構ありますけど、基本的に以下の3つは近い将来に導入される可能性は高いと考えます。
- 国家デジタル通貨
- 国際送金
- 証券決済
国債送金や証券決済は日本企業で参画している企業も多く、銀行が淘汰されていく時代に向けての生き残り策として力を入れる企業は増えると感じましたし、IT系企業はここにビジネスチャンスがあるんじゃないでしょうか?
そして気になるのは国家デジタル通貨ですね。ユーロ導入でEU諸国間の問題が顕在化している状況では、ユーロとは別の国家デジタル通貨を出す国が現れるかもしれないなと読んでいて考えました。
また、国家デジタル通貨を使って経済政策(マイナス金利)という可能性も本の中では示されていますが、懸念点として新たなバブルの誘発はありうるなと。
それ以外の可能性だとベーシックインカムとしての使用に限定することもできるかもと個人的には考えました。
金融業界でなぜブロックチェーン技術やフィンテックが盛り上がっているのかがよくわかる本として評価したいですね。
既に仮想通貨をあまり理解せずに保有している人、仮想通貨に興味はあるけど良くわからないという人はとくに読んでおいた方がいいかと考えます。また、国内外の銀行・証券会社に勤務あるいは投資をしている人も将来何が起こるかを把握する上でも必読の書だと思います。


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