インドシフトを読んで見えてくるインドの底知れないポテンシャル
BRICsというフレーズはあまり使われることはなくなりましたが、この中で投資をするとすれば?と聞かれると個人的にはインドと答えます。
人口増加傾向、英語が公用語のひとつ、新興国なのにIT関連に強いなどありきたりな理由ばかりとなってしまいますが、インドについては情報を仕入れたいなと。
ちょうど最近出た本で激変するインドIT業界の状況が書かれたインド・シフト 世界のトップ企業はなぜ、「バンガロール」に拠点を置くのか?
という本を見つけましたので、読んでみました。
著者は、元ソニーのインド現地法人の社長で、2008~2015年まで約7年間にわたる駐在後も、インドIT業界団体であるNASSCOMの日本委員会委員長として、インドIT業界と日本企業の橋渡し役をつとめている人物です。
技術面や人材育成、労働コスト面などから、インドIT業界の成功要因を分析されていますし、インドのスタートアップ企業の状況や人材育成、インド発のイノベーション、インドに進出してきている外国企業の動向が紹介されています。
いままでインドETFが気になって記事にしたこともありますが、実際にインド現地に長期間いた方の意見ですので、技術的なものと進出してきているものは的を得ていると思いましたね。
インド株式ETF(iシェアーズ MSCI インドETF(INDA))の現状を調べてみた - 関東在住福岡人のまったり投資日記
BRICsの終わりとか数カ国脱落するんじゃないかという話も昨年は出ていましたが、資源価格の下落の影響を大きく受けたロシアやブラジルも昨年後半から株価が回復傾向ではあります。...
制限された環境だからこそ実現できるリバース・イノベーション
リバース・イノベーションといって「新興国の市場の中で生まれ、先進国に広がっているイノベーション」のインド初の例として激安火星探査機、GEの心電図計などがあげられていました。
通常、最先端のテクノロジーやノウハウを保有しているのは先進国な訳ですが、近年は従来とは真逆の流れが起きていると。
新興国はインフラが整っていなかったり、教育水準の低さ、衛生環境の問題があるわけで、先進国の商品はおいそれと買えるものではない。しかし、こうした環境の中で不可能と思えるチャレンジをできるからこそイノベーションが生まれると。
実際、新興国市場で先進国モデルが苦戦する内に、これじゃまずいと気づく先進国企業もでてきつつあるようです。
金融やセーフ系、決済サービスも国策で進めていますので、10年後人口が増えるインドのポテンシャルが計り知れない者があると読んでいて実感しました。
有望人財の多くがアメリカ企業の要職についている
マイクロソフトのサティア・ナデラが筆頭となりますが、それ以外にもノキアやGoogle、アドビシステムズもCEOにインド人が就任しています。
これを読めばマイクロソフト復活の理由がわかる。Hit Refresh(ヒット・リフレッシュ)を読んで - 関東在住福岡人のまったり投資日記
新しいパソコンを買ってから1ヶ月以上が経過しました。Windows10のデスクトップなのですが、...
とくにGoogleは退社したニケシュ・アローラもそうですが、OS担当、サーチエンジン担当、プラットホーム担当もインド人なんですね。
ほかにも名門大学やビジネススクールのトップになってるインド人も多く、バンガロールのIT人材が2020年には200万人にも達するとか。
これを見ると、世界的な企業がリクルーティングを行うのも納得ですね。
現地で見たインドの強みがよくわかります。
一方で優秀な人材がアメリカにますます流出していく可能性あり
強みは弱みにもなりかねないなと思う点が2点。
アメリカ留学するインド人の数も増え続けていますし、アメリカ企業による高度IT人材も高額の給与でリクルーティングされているわけです。
国内企業に残らずトップの人材がアメリカに流出してしまう懸念はあるかなと思いました。
とはいえ、90年初頭にアメリカ留学した世代はいま50代で、逆にインドに戻ってきたり、インドに対して投資をしたり積極的に人材を確保する立場になってる人がアメリカの大企業でいるわけです。
この点は将来的には強みにもなるかもしれません。
外国から進出してきた企業との競争も激化している
インドのスタートアップ企業の事例も紹介されているのですが、外国企業とくにアメリカ企業との競争も激化しているのが気になりました。
インド最大のeコマース企業のフリップカート、ソフトバンクが筆頭株主の業界3位のスナップディール、配車サービスアプリのオーラといった企業の状況があげられていました。
しかし、これらの企業に対抗するAmazonやウーバーが参入してきて、トップシェアの企業を猛追しています。
とくにAmazonは2014年に参入して、売上が10億ドル程度の中で20億ドル投資し、2017年にはアマゾン・インディアの代表が本社のエグゼクティブ・バイス・プレジデントに就任してとくに力をいれています。
投資金額は50億ドルまで増やしているようですから、これから競争激化するんじゃないでしょうか?
スタートアップ企業には外国からのお金が入っているので伸びていく余地はありますが、外国企業との競争がどうなるのかについては楽観視もできないのかなという印象です。
日本-インド間の関係強化は民間でも必要
個人的には著者はカースト制の風土が残っていたり、衛生環境の問題などをさらっと流している内容でしたから、懸念点も2点程上げてみました。
とはいえ、実際にITの人材をここまで抱えている国はないわけで。
国としても中東から資源を運ぶ上でのインドは重要な拠点となります。比較的国の首脳同士は結びつきを強くしようとしているように見えますので、日本人との性格上の違いなどもありますが、次は企業側も積極的にインドへの進出を検討していくべきだと考えます。


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