ジョブズ、ザッカーバーグを超える反逆の起業家の実像とは?ピーター・ティールを読んで
投資をやってる人で世界的な企業になるベンチャー企業を見つけることができれば・・と考える人は結構いるんじゃないでしょうか?
ただ、自分の専門分野ならば見つける確率も多少は上がるかもしれませんけど、そう簡単には見つかるものではないでしょうし、ベンチャー企業も操業当初は自転車操業のところも多く、うまくいくとは限りませんからね。
となると注目されるのは起業家ですね。
いま、ペイパルの創業者であり、フェイスブックの取締役やヘッジファンドの会長も兼務しているピーター・ティールの本が話題になっています。
反逆の起業家のキャッチコピーで本の表紙がこれです。ジョジョ立ちをほうふつとさせますし、反逆つながり且つ本が黒の配色なのでルルーシュと同じポーズでもありますw

出典:Amazon
この本は2017年9月にティールの出身地ドイツで刊行された本の翻訳になります。
ピーター・ティールは起業以外にも2016年のアメリカ大統領選挙でトランプの支持を打ち出し、トランプ政権の要職に関係者を送り込んでいます。
シリコンバレーにも大きな影響力を持つピーター・ティールですが、その生い立ちと独自戦略、破壊的思考法を読みますと非常に興味深い人間であると同時に、動向を追いかける必要があるなと思いました。
個人的に感想をまとめると長くなりましたが、以下の7点ですね。
バフェットとの共通点も見えてくるティールの投資術
6章でティールの投資方法をバフェットと比較して共通点が書かれていました。その中で上げられていたのは以下の7項目です。
- 徹底的に絞り込め
- 守備範囲を固めろ
- 長期的視点をもて
- 隠されているドアから入れ(他の人間がパニックに陥っているときに買う)
- バズワードを避けろ
- 自分の足で立て
- 固い友情
投資対象が異なるものの結構共通点はあるなと説得力があるものでした。
固い友情に関してはティールはペイパル創業時のいわゆるペイパル・マフィアの他にも、トランプとハイテク企業のトップの会合をセットしたりと人脈はバフェットよりも広いです。
基本的に絞り込み、長期的視野で、隠されているドアから入るというのはバリュー株にも通じる者があると思いました。
ティールが投資する優れた企業
ティールが優先的に投資する際に特別な企業なのかを判定する上で以下の3つの質問を上げていました。
①何に価値があるのか?
②自分には何ができるか?
③他の誰もしないことは何だろう?
実際、フェイスブックやデータ分析のパランティアはこの3つの質問に答えることができています。
さらに、優れた企業は①価値を創造する(未来の企業価値)、②長く市場にとどまる(継続性)、③創造する剰余価値の一部を資本に転化できる状態にある(価値の累積)。と3つの段階を定義しています。
その上で④独占可競争か、⑤市場占有と市場創造、⑥独占の特質 と独占企業に投資しています。実際、フェイスブックもパランティアもそれを満たしていますし。
これから投資をする上で6つの項目は参考になるのではないでしょうか?
投資先の評価方法と企業価値の最大化
投資先の評価方法ではPERを利益成長率で割った「PEGレシオ」を用いていて1以下の企業に注目するよう奨めているのが印象に残りました。
米国株の有力企業に関してモーニングスターで数値が出せそうならば近いうちにまとめてみようかなと。
あと、本質的な企業価値に関する点も興味深かったですね。
企業価値の3分の2は10年から15年後にようやく生じるので、オンラインプラットフォームの企業価値が75~85%になるのは2024年以降というのはハイテク企業に投資する人には心強いかもしれません。
競争は負け犬のものだ
自身が大学で哲学を専攻していたことと、法務事務官としてニューヨークで挫折したのがバックボーンにあると考えますが、その影響で独占企業を評価するのがよくわかる内容になっていました。
競争に夢中になり過ぎて、他の価値あるものが見えなくなり、視野が狭くなってしまうというのは注意しないといけないないと。
ただ、スタンフォード大出た人が言うので説得力があるような気もしますが。
グローバル化とはコピペである
考えとして面白いなと思ったのは、グローバル化=コピペです。
イノベーションとグローバル化を混同する人が多いが、グローバル化はある地域の事業をただコピーして、他の地域でそっくりそのまま再現することだと。
この定義を見て、ますますある分野のシェアを独占することこそ重要になるんじゃないかと思いましたね。仮に複数の会社が入る余地があったとしても、コカコーラとペプシみたいな感じにならないとやっていけない時代にますますなっていく印象を持ちましたね。
だからこそ堀を持つ独占的な企業に投資するのが重要になってくるなと思いました。
規制をもっと経済的でイノベーション・フレンドリーにデザインするためにトランプ支持
シリコンバレーのあるアメリカ西海岸は民主党が強い地域ですし、大統領選挙でもクリントン支持が大半だったのですが、ティールが支持した理由というのは腑に落ちるものでした。
自ら規制をもっと経済的でイノベーション・フレンドリーにデザインするということを目的として、実際にトランプ政権に関係者を送り込んでるんですから、畏怖すら感じます。
この本を読むとアメリカの西海岸・東海岸とその他の地域の格差、奨学金の高騰、シリコンバレー近辺の不動産価格の上昇などの問題が顕在化していて、なぜトランプが当選したのかというのが深く理解できる内容になっていると思います。
本の中でグローバル化容認のノーベル経済学賞受賞者のスティグリッツも「アメリカ人の9割の25年前から増えず、3割は当時よりも少なくなっていて、中国からの輸入が増えるほど、賃金は低くなり、失業率は高くなる」と言及してますし。
そのためにもイノベーションを起こさなければならないというのは、人口減がテーマではありますが吉川洋氏の考えにも通じるものがある印象です。
人口減少が進み働き手が減る中、どう対処すべきか?人口と日本経済を読んで - 関東在住福岡人のまったり投資日記
高齢化が進むと同時に労働人口も減少しており、日本は国だけではなく企業も対策をしなければならない状況です。では、人口と経済の関係って実際のところどうなのか?...
日本もイノベーションが必要なのではないか?
とくに以下の3点は日本にも当てはまることじゃないですかね?
「ニューヨークの地下鉄網は敷かれてから100年以上経っているし、インフラの多くはアップデートされていない」
「テクノロジーの進歩は人間の問題をすべて解決してくれるわけではありません。ですがテクノロジーの進歩なしには,私たちは一つとして問題を解決できないのです」
いまのシリコンヴァレーは政治的に不寛容で極端に左傾しているのだという。反対意見はすべて排除されるような状況となっており、異なる視点を受け入れない文化は革新を妨げる
ニューヨークの地下鉄網は日本の場合、道路や橋などのインフラといえますし、2番目は文章そのまま。3番目に関しても反対意見はすべて排除されるような状況を左側(日本の場合は赤い革命を未だにできると思ってる人間が含まれる)が生み出してるのは、日本が好きという内容の歌詞に文句つけるのみたら明らか。
少子高齢化も進む状況だからこそ、インドとかエストニアのような思い切った政策を実施していく必要があるのではと本を読んでいて考えました。
まとめ
アメリカ社会の現状から、アメリカで成功している起業家の戦略と哲学的な考えを知ることができる内容となってます。
投資をする上でも役立てる内容が多く書かれていますし、米国株投資家にもオススメしたい一冊です。


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