グローバル・エクイティ・モメンタム投資(GEM法)は株式のトレンドに乗りつつ暴落も回避可能なのか?
モメンタムのアノマリーに関しては注目していて、度々記事にしております。
米国株モメンタムETF(MTUM)から現在モメンタム効果のあるセクターと銘柄を確認 - 関東在住福岡人のまったり投資日記
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ウォール街のモメンタムウォーカー (ウィザードブックシリーズ)
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ゲイリー・アントナッチ パンローリング株式会社 2015-07-11
過去12カ月の米国株(S&P500)と非米国株(ACWI非米国株)とTビル(トレジャリー・ビルの略で、米国国債のうち一時的な資金不足を補うために発行される短期証券)の過去12カ月のリターンを月1回比較して、パフォーマンスの良いほう(債券はバンガードの債券ファンドやETFを想定)に投資する手法です。
要は株式は調子のいい方に投資し、株式が冴えないときは債券に退避するということです。
1974年からの40年間で年次リターンをS&P500と比較しても、GEM:年次17.4%、S&P500:年次12.3%と圧倒していて且つ、最大下落の年もGEM:-22.7%、S&P500:-51.0%と暴落時の下落の緩和もできていました。
これは素晴らしいとウォール街のモメンタムウォーカー発売直後に調べましたが、Tビルの値が参考にならずBNDを使って調べたりしました。
夏休み自由研究 グローバル・エクイティ・モメンタム投資(GEM法)を検証してみた
夏休み自由研究 続・グローバル・エクイティ・モメンタム投資(GEM法)を検証してみた
あれから3年経過し、ブログの書き方も一応改善。同時にウォール街のモメンタムウォーカーのGEM法のデータも2013年までですからその後どうなったのかが気になりました。
調べてみるとグローバル・エクイティ・モメンタム投資(GEM法)のデータを見つけましたのでまとめてみました。
グローバル・エクイティ・モメンタム投資(GEM法)概要
グローバル・エクイティ・モメンタム投資(GEM法)を簡単に表した図が以下の通りです。

月に1回以下の確認をする手法です。
①米国株(S&P500)と非米国株(ACWI非米国株)を比較する。
②①のパフォーマンスが高かった方とTビルを比較する。
③株式>Tビルならば対象の株式をバイアンドホールド、Tビルが高ければアグリゲートボンドをバイアンドホールド
投資先は日本で再現させるならば、S&P500(IVVかVOO)、非米国株(VEUかVXUS)、アグリゲートボンド(BND,AGG)あたりになるかと考えます。
この方法だとトレンドに乗るので高リターンを狙いつつ、大きな株価の調整が起こった際には、債券で回避することが理論上はできるはずだという話です。
ちなみに頻繁に売買が発生して取引のコスト負けするのでは?という話になりかねないのですが、平均すると年に1.4回程度の乗り換えで済むとのこと。
研究の論文の数値ではS&P500を大きく上回るものでしたが、実際の数値はどうなのか?2017年までの最新の情報も調べてみました。
過去30年のグローバル・エクイティ・モメンタム(GEM)のパフォーマンス vs S&P500
データを参照しますが、使ったデータのパフォーマンスの値は利息と配当の再投資は含みますが、運用報酬や取引コスト、税金の費用は含んでいません。
また、S&P500のリターンは2014年以降は著者のデータがなかったため、他から拾ってきた数値ですので異なる可能性があります。
1988年からの30年のGEMとS&P500のリターンをまとめますと以下の通り。
年 | GEMの年次リターン | S&P500の年次リターン |
1988 | 15.9 | 16.6 |
1989 | 23.8 | 31.8 |
1990 | 7.4 | -3.1 |
1991 | 26.6 | 30.5 |
1992 | 7.6 | 7.6 |
1993 | 13.2 | 10.1 |
1994 | 5.7 | 1.3 |
1995 | 34.8 | 37.6 |
1996 | 23.0 | 23.0 |
1997 | 33.4 | 33.4 |
1998 | 28.6 | 28.6 |
1999 | 22.1 | 21.0 |
2000 | -8.2 | -9.1 |
2001 | 8.4 | -11.9 |
2002 | 10.3 | -22.1 |
2003 | 23.3 | 28.7 |
2004 | 21.4 | 10.9 |
2005 | 17.1 | 4.9 |
2006 | 27.2 | 15.8 |
2007 | 17.1 | 5.5 |
2008 | -6.5 | -37.0 |
2009 | 11.6 | 26.5 |
2010 | 5.5 | 15.1 |
2011 | 0.7 | 2.1 |
2012 | 11.4 | 16.0 |
2013 | 31.0 | 32.4 |
2014 | 13.7 | 11.4 |
2015 | -6.5 | -0.7 |
2016 | 6.7 | 9.5 |
2017 | 21.8 | 19.4 |
2000年のITバブルや2008年のリーマンショック時も完全に回避することはできていませんが、下落幅も小さくなっています。
過去12カ月のリターンを使いますので、どうしても株価などのトレンドの変化の検知も遅れる場合があるということでしょう。
今回2013年以降のデータをつかしましたが、2015年や2016年はS&P500に負けています。
あと、1991年もS&P500に負けてますけど、これは日本のバブル崩壊が絡んでそうな気がします。
この2年は原油価格の下落とチャイナショックで新興国株式が不調でしたので、米国外株に投資している期間がありS&P500に負けたということだと思います。

※データ参照元
個人的には試してみたいと思わせるだけのものはあるかと。とはいえ手間はある程度かかるためモメンタムのインデックスファンドなりETFで何とかならんかなと。
毎月のリターンは掲載されるようですので今後も追っかけてみたいなと思います。
ちなみにESGモメンタムなるデータもありました。一応S&P500にも1986年からの比較でS&P500に勝ってるようなのですが、なぜこれを選んだかまでは論文をブログを全部読み切れてない状況です。
参考:Sustainable Momentum Investing: Doing Well By Doing Good
ウォール街のモメンタムウォーカー (ウィザードブックシリーズ)
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