究極の顧客戦略を取るAmazonに日本企業はどう対応すべきか?アマゾンエフェクトを読んで
Amazonについて書かれた本が増えている状況ですが、Amazonの強みや今後の展望、そして日本企業が今後どうするべきかというところまで網羅した田中道昭氏の「アマゾンが描く2022年の世界」がいままで読んだ中ではベターだと思います。
Amazonの次なる標的は?アマゾンが描く2022年の世界を読んで - 関東在住福岡人のまったり投資日記
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Amazon関連の本が増える中、アマゾンエフェクト! ―「究極の顧客戦略」に日本企業はどう立ち向かうかを読みました。
タイトルからAmazonにダメージを喰らわされた米国企業の実例かと想像していましたが違いましたね。
個人的に知りたいと思ってた膨張するAmazonに対して、とくに影響が大きいスーパーやコンビニといった小売業がどう対抗するかという観点をセブン&アイ執行役員だった視点から書かれていて、他の本とは一線を画してます。
著者の鈴木康弘氏はセブンイレブンを立ち上げた鈴木敏文氏の次男ですが、富士通→ソフトバンク→セブン&アイという経歴で、セブン&アイHDのゴタゴタから取締役を退いて、いまはITコンサルティング会社「デジタルシフトウェーブ」を立ち上げています。
鈴木康弘氏が携わったオムニ7に関してはいろいろといわれるところもあるでしょうけど、本の説明を読む限りでは鈴木氏の考えは支持できるものがあると考えます。
個人的に印象に残った点をまとめますと以下の3点ですね。
セブン&アイHDの元取締役が見たAmazonのリアル店舗
2017年の秋に鈴木氏はニューヨークを訪れ、Amazonがチェーン展開を開始した書籍販売のリアル店舗のアマゾン・ブックスと高級食品ストアのホールフーズを視察したそうです。
その中で興味深かったのはアマゾン・ブックスの陳列の仕方。
本の背表紙を外側に向けて横1列に並べる背差しは一冊もなかったそうです。結局本の在庫の関係で横一列に並べる日本に進出してきたら日本の書店は勝てないんじゃないか?という印象を持ちましたね。
本のカテゴリわけも星の評価や読みたいリストが多い本、エリアでのベストセラーなど特有の分け方もしていて且つアマゾン・プライム会員は割引があるとか。
在庫面を巨大な物流センター抱えてる面でも強いですし、日本に進出してきたら既存の書店を薙ぎ払いかねないという印象を持ちました。
また、ホールフーズの買収でプライム会員向けにプライムナウで生鮮食品の販売と最短1時間にないの配達を始めていて、都内でもやってるようです(サイトにアクセスすると登録している住所から対応してないといわれた)。
セブン&HDが危機感を覚えるのも無理はないなと思いました。
ウォルマートに関してはGAFA同様評価は高い
本の中でアマゾンへの対抗方法について言及しているわけですが、鈴木氏はアメリカ国内ではいまのところウォールマートぐらいと書いていました。
GAFAの中でも5番目の騎士になれる可能性は書かれてありましたので、小売業界にいた人でもそういう考えになるんだなと。
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ジム・クレイマーが提唱した注目する成長企業群FANGですが、2年前にはそれがNetflixがアリババに変わってFAAAになってたりとやはり成長企業は移り変わりが激しい印象を持ちました。...
ジェット・ドット・コムの創業者マーク・ロア氏はGAFAでも評価されていたようにEコマース業界の実力者で、ネット関連は整備されつつあるようです。
楽天やGoogleとも提携を進めているので、Amazonとの競争を生き残れる要素は多い印象を持ちました。
デジタルシフトのためにもIT人材の活用が必要なのでは?
鈴木康弘氏は鈴木敏文氏の次男で世襲では?と見られがちなのでしょうけど、経歴は富士通→ソフトバンクですし、起業も成功させてるんですよね。
オムニ7はいろいろといわれてるようですし、作った本人が書いた内容ですので100%鵜呑みすることはできないでしょうけど、以下のような考えを提唱出来て、IT起業にいた経験でいまは物流や販売管理にもシステムが必要な時代だからこそ必要な人材だったんじゃないかと。
- 客単価×客数からライフタイムバリュー×アクティブユーザー数へのシフト
- VUCAワールド(V:変動制、U:不確実性、C:複雑性、A:あいまい性)に突入
- AIDMAからAISAS(A:認知、I:興味、S:検索、A:行動、S:共有)への変化
日本企業は守りのIT投資が多かったり、IT技術者の所属先の日米の違いがアメリカ企業との差につながってる面は否めませんので、この点を考え直していく必要があるのは?と感じました(わたしが所属する会社も)。
Amazonにどうやって対抗するのか?という視点から書かれていておもしろい本だと思います。


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