やがて人類は一握りの神と大多数の無用者階級になる!?ホモ・デウスを読んで
読書が習慣となって5年以上経過しておりますが、個人的な興味対象として歴史の本はそれなりの量を読んでいます。
その中で、昨年1年間で1番良かった歴史本というと「サピエンス全史」でした。
認知革命→農業革命→科学革命を経てなぜ社畜が生まれるのか?という意味もわかる斬新さがありましたし。
狩猟→農耕→科学革命の流れで社畜は生まれた。サピエンス全史を読んで - 関東在住福岡人のまったり投資日記
本を購入するとなりますとたとえランキング的なもので上位にいたとしても、やはり自分の興味の範囲に近いものではないと手を出しませんし、引っ越してから図書館の質が上がったため借りて済ませるというのも選択肢の一つになります。ですので、購入の決断は図書館の予約の人数とかも鑑みることになります。そんな中、評判が高くて私の興味対象である歴史が絡んでいるサピエンス全史は、上下巻あるとはいえ購入して読み終えました。...
タイトルはホモ・デウス。デウス=神ですので、ホモ・サピエンスは現在も進化中でテクノロジーが飛躍的に発展していくと神のような存在になるという意味でこのタイトルです。
サピエンス全史の最後の方で、サピエンスは自然選択の法則を打ち破り、生物学的に定められた限界を突破し始めているため、サピエンスはいずれシンギュラリティ(特異点)に至るとハラリ自身が言及していました。
ホモ・デウスはその内容の延長線上が中心という感じで、人類が将来的に進化していく可能性についてまとめられています。
個人的にはサピエンス全史よりも哲学的に感じました。
将来起こりうる可能性があり、その影響を受けてしまいかねない世代だからそう感じたのかもしれませんが、サピエンス全史とジャレドダイアモンドの銃・病原菌・鉄を事前に読んで面白いと思った人にはとくに勧めたい本だという印象ですね。
個人的に印象に残った点をまとめますと以下の3点でしょうか?
人類が次に目指すのは不死と至福と神性
前半部分ではサピエンス全史と被ってる内容もあり、虚構を作り出す力によって、いかにサピエンスが圧倒的な力を地球上で得る種族になったのかについての復習も含まれています。
人類は飢餓、疫病、戦争に困っていたものの現状は大きく改善。戦争が局地的に起きているとはいえ人類史から見れば微々たるもので、飢餓と疫病に関してはますます改善が進むでしょう。
テロで死ぬ人より肥満で死ぬ人の方が多く、先進国ではアルカイダよりコカコーラの方が危険だと。
そして次に人類が目指すのは不死と至福と神性であると。
直近の100年を見ましても、老いと死、苦痛から解放され、強い免疫や幸福を科学的に手にいれてるわけですが、3Dプリンタやゲノム治療、ロボット手術などの医療技術の進化で、あらゆる臓器や情動、知能をデザインできるようになっていくでしょう。
とはいえ人間の自由意志に関する数々の実験結果を見る限り、欲求は自分でコントロールできないわけで、自由意志で行動していないとすれば不死と至福と神性を目標とすると、やがて踏み外す可能性があるなと。
現状、人類は健康と幸福と力を与えてくれることを願い、自らの情報をネットワークへと差し出しています。
人間至上主義を追求するために必要な行為ですが、データが増えていくにつれ人間から情報ネットワークへと権力が移行してしまい、人間至上主義の基盤が崩れてしまう可能性も否定できないという視点は納得がいくと同時に怖さを感じました。
Google上にAmazonで買ったものが出てきたり、twitterでAmazonで注文したものが潰れてたとつぶやいたら、10分以内に返信が来たりするのを見て、GoogleやAmazonに一種の怖さを覚えるものに近いですね。
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将来格差が進み就労不能な無用者階級ができる
本書ではサピエンスを含む生物はアルゴリズムという観点で見ているのは面白い見方だと思いました。
そのアルゴリズムですがテクノロジーの進化により、コンピュータで作るアルゴリズムで代用可能になってしまいます。
平行してバイオテクノロジーも進化するわけですが、そうなるとバイオテクノロジーとAIの力で一部の人間が不死になり神と化し、大多数は無用者階級になるという可能性の提示は一定の説得力があります。
バイオテクノロジーやコンピューターアルゴリズムなどのテクノロジーを理解しないと列車に乗り遅れ、それを理解する人としない人の格差はサピエンスとネアンデルタールほどの差になり得るとかなり脅し的に書かれてました。
一部の人間はバイオテクノロジーで長命となった上に、受けれる医療技術に関しても最先端を受けれるのに対して、無用者階級は仮に50年後いまよりも優れた医療技術を受けれても、一部の長命となった人間とは格差がある状況も起こりうるかなと。
結局ライフ・シフトの人生100年時代にも通じることになるわけですが、「これからの人間は常に学習して己をアップデートしないと「無用者階級」になってしまう」「追加で高齢まで働く」というのが避けられない現状ってかなり厳しいですよね。
同時にどこかでもうアップデート無理と投げ出す人間も結構出てくるかと。
コンピュータで作るアルゴリズムで代用可能まで行くと、神経なんかも制御可能になりやがて「無用者階級」はとくに不満も覚えずに時間を過ごすだけという存在というSF小説の世界が実現する可能性はあるのかもしれません。
ネットは広大とかマトリックスの世界が現実になるのも否定できないかと。
資本主義と共産主義はデータ処理の仕方の違いにすぎない
生物をアルゴリズムとして見る視点以外におもしろいなと思ったのは、人類という種全体を単一のデータ処理システムと解釈していくことですね。
たとえば資本主義と共産主義は、競合するイデオロギーでも政治制度でもなく、データ処理の仕方の違いにすぎないと。
では、なぜ資本主義が共産主義に勝てたのかというと、資本主義が分散処理を利用するのに対して、共産主義は集中処理に依存していると。
20世紀から続くテクノロジーが加速度的に変化する時代には、分散型データ処理が集中型データ処理よりも上手くいったからだそうです。
この文言を読むとEUがなぜ上手くいかないのかは、国が分散型だけど結局1つにまとまって集中型になってしまうからじゃないかと思いましたね。
とはいえ政治的な決断は集中型の方が上手くいく場合もあるのでしょう。共産主義が終わったとはいえ集中型のシステムの国は結構ありますし。
ただ、データが膨大に膨れ上がる現代においては、データ至上主義がデータ教と呼ばれるような強い支配力を持つようになるという指摘は説得力とインパクトがありますし、資本主義に変調を与える可能性はあるかなと考えます。
ハラリ氏はインタビューなどでも「人類の未来はまだわれわれの手にある」旨の発言をしておりますが、本の中で問いかけているテーマは人類の多くがホモ・デウスとなるためにはどうすればいいかを考える必要性があることを示唆してるように思えました。
歴史✕テクノロジーの知識が豊富な著者の将来予測なだけに、自分自身が将来生き残る上での警告がまとめられている本という意味でも貴重かなと思う一冊です。


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