投資で利益が出ているときこそ長期投資家にとっては必読の書。市場サイクルを極めるを読んで
投資を続けてきて幸運にも上昇相場に乗ることができましたが、リーマンショックを経験していないので、本当の下げ相場がいかほどのものか?と考える人は20代30代で結構いるんじゃないかと思うんですね。
長期投資を目指す上で、いかに大きな調整を耐えうるかというのは一つの大きな課題だと個人的にも考えます。
長期投資を考えてる人の中で、暴落に対する心構えを理解するのに良い本として奨められてるのを見かけるのが、オークツリー・キャピタル・マネジメントの会長兼共同創業者のハワード・マークスの「投資で一番大切な20の教え」ですね。
もう読んだのはブログを始める前なんじゃないかと思いますが、哲学的な要素が多いとはいえ投資の心理と真理を突いた良書だと思います。
そのハワード・マークスの新作が今月発売されましたので、早速買って1週間で読み切りました。
前著の「投資で一番大切な20の教え」の20の要素で最重要項目である「市場サイクル」についてまとめたのがこの本になります。
この本を読むと間違いなく、現状の市場サイクルはどうなのかということを考えてしまいますね。
株価が上下に激しく動く時期に、現在の市場サイクルについて考えてみる - 関東在住福岡人のまったり投資日記
リーマンショックは経験してないけど、その後から投資を始めて投資の成績はプラスという20代後半から30代って、確定拠出年金やNISA、iDeCoの普及もあって結構いると思うんですよね。...
読み終えてこれだけ世界的投資家が褒めるのも納得できる内容だと思いますし、10月の株価の急落を受けてもまだ投資を始めて利益が出ているこのタイミングだからこそ、いま読むべき本ではないかと思いました。
ハワード・マークスの市場サイクルは、レイ・ダリオの経済は機械のように動くとという考えよりも長期的な視野
市場サイクルという意味ではレイ・ダリオの「経済は機械のように動く」という考え方もありますが、レイ・ダリオが示す以下の4つの季節は順番がわからないというものでした。
貯蓄→投資から黄金ポートフォリオの作り方まで学べる、世界のエリート投資家は何を考えているのか - 関東在住福岡人のまったり投資日記
山崎元氏が本の発売前に、解説を書いたということで、コラム内で紹介していた世界のエリート投資家は何を考えているのか: 「黄金のポートフォリオ」のつくり方を読みました。ちなみに世界のエリート投資家は何を見て動くのか: 自分のお金を確実に守り、増やすためにという本とセット的な感じですので、青い方が上巻、赤い方が下巻という感じでいいと思います。...
それに対して、ハワード・マークスの市場サイクルとはもっと長期的スパンで見た感じで、以下の図で表されています(自身も説明するときによくこの図を書くそうです)経済は「想定インフレ率より高い/低い」「想定成長率より高い/低い」の4つの季節として捉えることができる。ただし自然と異なりどの順序で訪れるかは分からない

本書を読んだ後、レイ・ダリオの4つの季節というのは短期スパンの移り変わりのように印象を持ちました。
このサイクルを俯瞰的に見渡しながら、いかにa,e,g,fといった局面で投資をするか?また、いまの市場サイクルはどの位置かということを考えることの重要性を実感しましたね。
強気相場の三段階プロセス
当たり前のことなのですが、市場サイクルの意味で相場の加熱感をわかりやすく表しているのが、「強気相場の三段階プロセス」でこれは印象に残りましたね。
- まず、並外れて洞察力に富んだ一握りの人が、状況が良くなると考える。
- 次に、多くの投資家が実際に状況が良くなっていることに気づく。
- 最後に、すべての人が状況が永遠に良くなり続けると思い込む。
3番目の状況になった実例として、リーマンショックに至る過程が詳細に書かれていました。
リーマンショックを経験していないからこそ、この内容を忘れないようにしたいなと。
同時にこの3段階はここ数年の仮想通貨関連の動きを示唆しているものでもありますし、「すべての人が状況が永遠に良くなり続けると思い込む」という状況は現状の世界の株価に通じる面もあるわけです。
もちろんハワード・マークスも「サイクル・ポジショニングは基本として、アグレッシブに行くか、ディフェンシブに行くか、つまり市場との相対比較で見てリスクを高くするか、低くするかという選択によって決まる。」と言ってますので守りすぎても良くないのですが、警戒感を下げない方がよいかなと。
極端な状態にあることを察知し、それに乗じるのが我々が望みうる最良の策である。という本書でのコメントはまさにその通りで、長期投資をする上で極端な状況にあるときに株式と相関性の低いものに投資する、あるいは株価が大きく下げたときに投資するのを個人的には投資の理想型におきたいなと思いました。
金融に関する記憶が持続する時間は極端に短い
サイクルを理解する上で、6章の企業利益のサイクルから9章の信用サイクルはとくにハワード・マークスが力をいれて欠いてると思うので、本の中でも重要だという印象です。
とくに8章のリスクに対する姿勢のサイクルはページ数が一番多く、強調したい部分でしょうね。
その8章の中で「バブルの物語」の著者ジョン・ケネス・ガルブレイスとバフェットの言葉の2つを紹介している部分が一番印象に残りました。
ジョン・ケネス・ガルブレイス「金融にかかわる大惨事が起きても、あっという間に忘れ去られてしまう。さらにその結果、同じ、あるいは非常によく似た状況が再び生じると、それは金融業界、そしてより広い経済界における輝かしい革新的発見として、新しい世代に大歓迎されるのだ。そうした世代とは、だいたいが若く、そして例外なく自身に満ちあふれたもの立ちである。」
バフェット「他人が慎重さを欠いているときほど、自分たちは慎重にことを運ばねばならない。」
若いので投資でも取り返せるとリスクの高い商品を勧めるケースも見かけたことがありますが、取り返しのつかない状況になってしまう場合もあるのでどうなのかと思うだけに、投資をする上での留意事項じゃないかと。
革新的技術の文言にあてはまるものとして、昨年の今頃ビットコインとかまさにその例じゃないかと。アフィリエイトを煽ってた人間が、いまでは一切いなくなったのを見ると無責任でモラルないなと思えてしょうがないです。アフィリエイトする人間にも責任ってあると思うんですよ。
ともあれ、ジョン・ケネス・ガルブレイスが挙げた例に自分が陥っていないかを今一度見直すべき時期は来ているかなと思いました。
また、バフェットの言葉は逆説的にも捉えることができて、みなが慎重なときこそ大胆にことを運ぶ必要があるかなと。
まぁ、それができないからこそサイクルの底に達する前の、人がどんどん慎重になる時期から投資をしておくのがベターかなと考えます。
相場の雲行きが怪しいいまだからこそ見直したい、市場サイクルに関する格言12選
400ページ以上の分厚い本で哲学的ですが、その分エッセンスがぎゅっと詰まったものになってました。
備忘録的にいつでも読み返せるように個人的にいいとおもった格言的文言12選をまとめてみました。
- もし完全に効率的な市場というものがあるのなら、そしてもし人々が感情を排し、冷徹な計算に基づいて判断を下すなら、サイクルは消滅するかもしれない。だが、そんなことはあり得ない。
- 投資で成功することは、くじ引きで当たりを引くのに似ている。優れた投資家とは、箱の中にどのようなくじがあるのか、ひいてはそのくじ引きに参加する価値があるのかどうかを感知することに秀でた人である。
- わたしの考えでは、ポートフォリオをある時点で最適な形で組むには、攻撃性と防御制のバランスをどのようにとるか決めることが最良の方法である。
- サイクルに関して基本原理が存在する場合もあるが(存在しない場合もある)、変動の大半はサイクルが形成される際に人間が果たす役割に起因する。本書で取り上げているサイクルの激しすぎる変動は、概して行きすぎた心理状態によって起きる。
- その過剰な揺れを理解し、警戒しておくことは、サイクルの極端な変動の悪影響が及ぶのを避け、あわよくばそこから利益を得ようとする上で、まず必要となる手順である。
- いかなるときでも、投資家が集合体としてりすくを どのように見ていて、それをもとにどのように振る舞うかが、我々を取り巻く投資環境が形成される過程で圧倒的に重要な役割を果たすのだ。
- 投資リスクの最大の源は、リスクはないという思い込みだといえる。リスクに寛容な姿勢が広がることは、その後の相場下落を示唆する何よりも有力な前触れとなる。
- リスクへの対処について投資家がどう考えているかを理解することは、追求すべき物事の中でおそらくもっとも重要なことである。
- 信用サイクルに対処する上で重要なのは、すべてが順調な状態がしばらく続いており、良いニュースが絶えず、リスク回避志向が薄く、投資家が意欲的なときに、サイクルが頂点に達するのだと認識することである。
- すばらしい投資成果は質の高い資産を買うことではなく、契約条件が妥当であり、価格が安くて潜在リターンが大きく、リスクが限定的な資産を買うことによって達成される。
- もっとも留意すべき点は、同じタイミングで心理、信用の利用可能性、価格、リスクのそれぞれのサイクルが頂点に、潜在リターンのサイクルが谷底に達すること、そしてだいたいの場合、最後の買いの激流と同時にこれらが起きることである。
- 下落し始めた後で市場から撤退することは、まさしく投資における大罪なのである。
10月は株価が下落しましたし、冬のボーナスまで1ヶ月を切った人も多くボーナスを使ってなにに投資しようと考えている人も多いでしょう。
上昇相場が続いている状況だからこそ、歴史から学ぶ必要性を思い出させてくれるこの1冊だと思います。
ボーナスの投資の計画を立てる前に、いまアクセルを踏みすぎて道を外しかけてないか、リスクとリターンの関係がおかしくなってないかを見直す上で読んでおいて損はないでしょう。
とくに長期投資を行うのであるならば必読の本だと考えます。


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