長期投資家の必読書!?ファクター投資入門を読んで
年末年始の帰省で本は大量に持って帰っているのですが、年始一発目の本の記事はこれにしようと思っていた本を荷物に入れ忘れてしまいました。
流石に関東に戻ってから読んで記事にするのは無理という感じでしたので、第2候補の3冊から考えて今年はファクター投資も一部やってみる予定という観点から選びました。
ファクターといっても数百あるといわれてますので、どのファクターが真に価値のあるものなのかを知りたいところ。
その意味で実用的なファクターの理論を特殊な知識を持たない読者でも、ファクター投資を実践できるように指南しているの「ファクター投資入門」です。
ファクター投資入門 (ウィザードブックシリーズ)
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アンドリュー・L・バーキン,ラリー・E・スウェドロー パンローリング株式会社 2018-11-18
さすが調査部長なだけあって、膨大な論文の結果から各ファクターが有効であるかを分析しています。
付録で配当や低ボラティリティ、デフォルトなども分析されていて興味深かったですね。
配当や低ボラティリティの調査結果が付録扱いなので、本編並みに付録が長くなっていますが。
文章の中に結果が盛り込まれ過ぎてる感があるのがネックとは考えますが、ファクターを定量的に扱っていて且つ学術的な研究に基づいていてよくまとめてるなと思いました。
個人的に印象に残った点をピックアップすると以下の4点ですね。
興味深いクオリティのファクター
章立てで重点的に取り上げたファクターは以下の7つです。
- 市場ベータ
- サイズ
- バリュー
- モメンタム
- 収益性・クオリティ
- ターム
- キャリー
真に価値のあるファクターとして以下の5つの基準を適用していて、上記の7つはクリアしたファクターになります。
①持続性・・・長期間にわたり、異なる経済的レジームでも有効である。
②普遍性・・・あらゆる国、地域、セクター、さらにはアセットクラスで有効である。
③安定性・・・どのような定義でも有効である(PBR、PER、PCFR、PSR)。
④投資可能性・・・机上のみならず、取引コストなど実践するときの検討事項を考慮したあとでも有効である。
⑤合理的な説明・・・そのプレミアムとそれが存続する理由を、リスクに基づき、または投資家の行動に基づいて、合理的に説明することができる。
長期リターンやアメリカ以外の国の結果に関しても調べらていて参考になります。ただ、日本株に関しては当てはまらなかった項目もあるため、日本株に関しては留意が必要かもしれません。
個人的には5章の収益性・クオリティのうち、クオリティファクターが気になりましたね。iシェアーズのスマートベータ系ETFにも含まれますし。
①利益のボラティリティが低い、②利益率が高い、③資産回転率が高い、④財務レバレッジが低い、⑤営業レバレッジが低い、⑥銘柄保有特有のリスクが小さい という6つの特徴を有する企業(とくに収益性高、安定、成長、配当性向高い)はよかったとのこと。
さらにバリューとの負の相関関係にあるので、大きな分散効果がありシャープレシオも高くなるそうです。
なお取り上げた5つのファクターのパフォーマンス一覧表がありまして、モメンタム最強ではありますが、負の相関のあるファクターと組み合わせるのも悪くないなと思いました。

配当は有効なファクターたり得ない
付録になってしまいますが、過去の分析から配当は有効なファクターたり得ないと論理的に説明されていた項目は興味深かったです。
分散効果の減少や財務という点での配当戦略の負の側面を考えると、心理的優位性を強く求めないのであれば、ファクター動物園に展示された配当を見に行く理由はないとまで言い切ってます。
とはいえ高配当ETFのパフォーマンスがいいケースもあるという話なんですけど、これは既に一般的になってるファクターで説明がつくとのこと。
配当戦略はバリューファクターで十分説明可能だそうです。
じゃあ増配戦略は?となるのですが、バンガードのVIG設定後の2006年6月以降を見ると、モメンタム以外は統計的にも有意だったという調査結果でした。
とくにバリューとクオリティは統計上の優位性を示す指標のT値が高く信頼度は高いそうです。
ファクターのプレミアムは広く知られると減少するのか?
3番目にファクターのプレミアムは広く知られると減少するという8章の結果は、今後留意しておきたい点。
学術研究ではアノマリーが広く知られた後、機関投資家はそれを求めて取引し、プラミアムは消失ないものの規模は3分の1ほどに低減しているとのこと。
付録に書かれてる低ボラティリティもバリュエーションが高くなってるそうですし。
みなが同じ方向に向く前がベストということでしょうね。
ファクター同士の組み合わせを考えてみる
最後のファクター同士の組み合わせの興味深い結果を紹介します。
ポートフォリオをそれぞれ、P1(市場ベータ、サイズ、バリュー、モメンタム)、P2(市場ベータ、サイズ、バリュー、モメンタム、収益性)、P3(市場ベータ、サイズ、バリュー、モメンタム、クオリティ)でそれぞれ均等に構成します。
これを1927年~2015年でリターンとリスクを見た結果が以下の通り(平均リターンは他の表を見る限り年間プレミアムを指す)。

収益性やクオリティを加えるとリターンが上がって、シャープレシオもよくなってます。
逆に長期的過ぎてという留意は必要ですけど、この点をポートフォリオに活かさない手はないかなと。
個人的にはVIGに含まれるファクターを考えると、モメンタムへの投資を考えたいなと思いました。
帯でバートン・マルキールも「ファクター投資について知りたいと思うことのすべてがこの1冊にまとめられてる」と書いてます。
個別株を投資する場合でも参考となる要素が詰まってる本ではないかと考えます。
ファクター投資入門 (ウィザードブックシリーズ)
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アンドリュー・L・バーキン,ラリー・E・スウェドロー パンローリング株式会社 2018-11-18


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