過去30年S&P500を圧倒しているファンドマネージャーは小さな範囲で考える。ティリングハストの株式投資の原則
インデックス投資寄りの投資方針を取ってますが、個人的にいろいろと調べて分析することが好きなので、完全に機械的に投資するという形ではなく、自分の判断で投資対象の比率の変更とかはやりたいという考えです。
数年内に短期的な資産規模の目標に到達しそうなのでいずれ個別株にも投資をする予定ですし。
投資をする上で、グロース株orバリュー株という話はあるのでしょうけど、競馬をやってるせいなのか、グロース株の中にはこれから先々伸びる可能性が結構あるにも関わらず、なんか過剰人気で価格も高すぎないかという考えになることは多いです。
なので性格的にはバリュー株の方が向いてるかなと思います。
とはいえバリュー株も常勝なわけではありませんので、保有後も調査と労力はそれなりにかける必要があるでしょうね。でもそういう時間って嫌いじゃないんですよね。競馬の予想をしてるときと同じように。
その感覚にピッタリで、これは良書と確信をもって、とくにバリュー株投資を志向する人にはとくにお勧めしたいのが、「ティリングハストの株式投資の原則」です。
著者のジョエル・ティリングハスト氏はS&P500を大きく上回るパフォーマンスを示しているフィデリティ・ロープライスト・ストック・ファンド(日本株にも投資してます)のファンドマネージャーを設定来勤めています。
フィデリティに勤めるようになった経緯からピーター・リンチの直弟子にもなります。
本書の中ではこれまでに経験した投資に関する経験則から、いろんな相場環境でも正しい疑問をもって、運用を客観的かつ生産的に考える方法をまとめていて、投資家が陥りがちな誤りを回避する術を伝えています。
インデックス投資や、バフェットに関する内容も数章で言及されいて、投資で成功するためのシンプルかつ重要な要素が詰まっています。
個人的に印象に残った点をピックアップしますと以下の5点ですね。
ティリングハストの投資手法
ティリングハストの投資手法をまとめると銘柄をピックアップして以下のような項目について取捨選択を行っているようです。PERやROEの数値を重視しています。
- 利回り(PER[株価収益率]の逆数)で株式の将来のリターンを推測する。
- 公表された利益が実現利益に転換されない銘柄を除外する。
- 10年間の利益率やROEの平均で名目利益を予想する。
- バリュエーションを正当化できるだけの成長がみこめるかどうかを確認する。
- 同じような平均利回りを持った信頼足る銘柄をグループ化し、そこから許容できないリスクを持つ銘柄を除外する。
これ以外の他の章の内容などから特徴をまとめると、PERが低く、クオリティと成長性が高く、長期的な見通しに関する確実性が高い銘柄ですね。
別のページでは以下の項目を確認するとも書いてありました。
- その銘柄の利回りは高い(PERは低い)か
- その企業は成長機会において大きな利益を 上げられるような特別ななにかをしているか
- その企業は永続すべき体制にあるか、それとも流行や共創や陳腐化や過大な債務などのリスクにさらされているか
- その企業の財務状況は安定しているか、遠い将来まで見通すことが出来るか、それともシクリカルで変動が大きく不確実か
財務状況に関してはITバブル時実体験を基に重視しているのが伝わってきます。
ITバブル以降S&P500とのパフォーマンス差を広げたファンドを運用していますけど、ハイテク株の分野にバフェットはおらず、運と勝者総取りで、低PERはハイテク株でも有効とも言及していて、ハイテク株に全否定的というわけではありません。
本の中でボーグルやバフェットの名前が頻繁に出てきますけど、バフェットと似た銘柄選択を行っているという印象を持ちました。
投資を行う上で教訓としたい5項目
投資全般で教訓としてあげられてた5項目は、他の投資関連のブログの失敗例を見ていても他山の石として守りたい基本事項だと思います。
- 自らの動機をはっきりさせ、感情に従って金融上の判断を下してはならない。
- 理解されないものもあれば、自ら理解できないものもあることを認識しなければならない。
- 正直かつ信頼に足る人々、独特の勝ちを持つなにかを行っている人と投資をしなければならない。
- 世の移り変わりやコモディティ化、過剰な債務でも破壊されない事業を支持しなければならない。
- 支払う価格よりも大幅に価値を持つ投資を探し続けなければならない。
とくに1番最初の欲にとらわれすぎて判断を誤ることと、自分が間違っている、理解でいていないということを素直に見つめる、認識するという2点が、歳を取って投資用の資金や資産が増えたときに意識しておかないといけないなと肝に銘じておきたい。
ギャンブル的側面ではなく、投資を行っていることを確認するためのチェックリストも重要だなと思いました。
- 長期間にわたる企業全体の利益に考えているか
- 自らの結論にかなりの確信が持てるまで調査を行ったか
- 自らの資産は安全であると言えるだけ事業は安定しているか
- 適切なリターンを期待するのは合理的か
要するに感情に引きずられずに、十分に調査することが投資をする上では必要というのは、個人的にも同感です。
シンクスモール~小さな範囲で考える~
この本のタイトルにもなっていますが、7章の小さな範囲で考えることは著者がとくに強調したい部分だと考えます。
とくにこの文言は大事にしたいなと。
小さな範囲で考えるというのは、上記のように自分が知識を有していたり、身近にあるものに投資するという考えにも当てはまるでしょうけど、個人的には別の見方もあるのかなと。間違いは小さいほど、概して容易に修正できる。シンク・スモールを心がけることで、間違いの重大さや頻度を抑えるだけでなく、よりよい心構えを持ち、それを予測し、また修正することを可能とするのだ。
仮に自分が知識を有していなかったり、身近にないものだとしても、調査を行い理解して投資手法に当てはめ、スクリーニングを行った後に残った小さな範囲で考えるというのも該当するんじゃないかと思いますね。
日本への投資事例から、先進国に集中的に投資をしている理由
日本株にも投資しているファンドを運用しているティリングハスト氏ですが、本の中では日本だけでなく、ブラジル、ロシア、中国企業への投資に関する事例が載っています。
日本のケースで紹介されたのはコスモス薬品で、いまだに組み入れ比率が高くかなりの利益を出していることが書かれていました。
フィデリティのポートフォリオマネージャー、ティリングハストが投資している日本株 - 関東在住福岡人のまったり投資日記
投資関連の本を1ヶ月に2冊くらいは読んでいるのですけど、中には400p超えの本もあります。とはいえページ数が多い分、量も内容も豊富な本が多いですね。...
当然ファンドも米国中心ではあるのですけど、米国外への投資に関して以下のように言及されています。
- 法の支配が行われている国々のどこを選ぶかについては、PERがより低い国を選んだ方が優れた判断基準となるだろう。
- ほとんどの投資家にとってかつての大英帝国に属した先進国から始めるのが最良であろう。
イギリスの植民地だったとなりますと、思いつくのはオーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、香港、カナダですかね?
法の支配の定義は書かれていませんでしたが、日本と旧イギリス植民地、欧州レベルを求めてるのでしょう。
個人的に気になったデータ
またこの本で興味深いの多くのデータですね。個人的に以下の項目は興味深かったです。
- GDPが急速に増大している国が株主にもっとも高いリターンをもたらす国ではない。
- ブランド力のある非耐久性消費財を生産する企業(酒、鉄道、たばこ、ガス、製薬、ディズニー)は、ほかの産業よりも高い利益率を維持してきた。
- 市場インデックスのPERが低いときにリターンは大きくなる。
- CAPEレシオが低ければ、投資リターンは増大する。
とくに2番目と3番目の項目は、今後の投資においても参考になると考えますので、別途記事にもしようかなと考えています。
同時に個人的に投資手法や投資に対する考え方に共感する点が多かったです。
米国株に投資をしている人や、国内外とわずバリュー株への投資を考えている人は読んでおいて損はない一冊だと考えますし、インデックス投資の手法をとってる人でも得るものがある本じゃないかと考えます。


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