海を制するものが世界経済を制する。海の歴史を読んで
競馬の予想スタンスとしても過去のデータを重視するのが性に合ってますので、歴史の本を読むのもまた習慣となっています。
投資だろうが競馬だろうがデータにプラスアルファする発想力的なものが必要だとは思いますが、過去の韻を踏むことが多いだけに、過去起きたことというのは可能な限り理解し、今後に活かしていかないといけません。
投資にも活きるかなと最近読んでいて思ったのがジャック・アタリの「海の歴史」です。
ジャック・アタリは初代欧州復興開発銀行総裁で、ミッテラン、サルコジ政権の大統領補佐官を勤めたフランスの経済学者で、思想家でもあります。
これまで今後の予測で結構外している人ではありますけど、この本は宇宙、水、生命の誕生から、将来の海の経済、地政学まで書かれていて、海の重要性がよくわかる本だと思います。
個人的に「海」に関して
中国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、インドネシア、シンガポール、ベトナム、韓国、日本が勝ち組となる
第3章のカルタゴ、ギリシア、ペルシアの時代から今日に至るまで、巨大勢力となるためには自国の水域と海底の価値を理解し、それらを保護することを実施してきた国であり、近隣国との紛争に巻き込まれないことだとアタリは説きます。
まさにイギリスなんかはわかりやすくて、結局第1次世界大戦のドイツの台頭あたりから雲行きが怪しくなってきていますし。
今後、エネルギー面での省エネ化は止まらないでしょうけど、石油や石炭などの船で輸送するしかないわけですし、データ通信に関してもすべて衛星というわけにはいかず海底ケーブル経由が減ることはないでしょう。
海底ケーブルの重要性を考えると、上記であげた国の中でも今後数十年人口が増えるアメリカの強さはそう簡単に揺らぐものではないかなと。
他の国々はインドネシア以外既に人口が減り始めている国ですし。
気になった点はここに出てくる国は欧州と日本までの間を結ぶラインに登場してきていますけど、欧州とアジアの中間点のインドに関してはナイジェリアと並んで長期的には勝者になりうるとしか書かれてないんですよね。
ナイジェリアに関してもわざわざアフリカの西海岸側という立地が疑問でしたね。
ちなみに、海がない国でも確固たる地位を築いた国はあり、とくにスイスに関しては付加価値の高い産業に特化して、金融サービスに特化すればデータ経済でなんとかなるという意見で、内陸国に関してはこの視点もあるかなと。
ハイテク人材の取り込みにシンガポールとスイスは積極的という話もありますので、この2カ国はやっぱり注目しておいて損はないかなと思いました。
フランスと中国、海に興味を持たなかった歴史
ヨーロッパに関してはドイツとフランスが並立した体制が変わらないと今後は厳しいと書かれていまして、ヨーロッパ大陸ならびにヨーロッパ大陸圏外との相互依存関係を、海洋を通じて構築する必要性を説いてました。
その意味でTPPに入りたがっているイギリスはそれなりに可能性があるかなと。自分から離脱した形ではありますけど。
興味深かったのはフランスと中国の海に興味を持たなかった歴史ですね。
フランスの場合は興味を持たなかったというか要所要所で海軍に力をいれなかったために、アタリのカウントだと8回も機会を逸しています。
そして中国の場合はサピエンス全史同様上げられてた明の鄭和の事例があるものの、基本的には自国でなんとかなったのと、度々異民族襲来や内乱で国が混乱・分裂して内にこもったのが原因と書いています。
狩猟→農耕→科学革命の流れで社畜は生まれた。サピエンス全史を読んで - 関東在住福岡人のまったり投資日記
本を購入するとなりますとたとえランキング的なもので上位にいたとしても、やはり自分の興味の範囲に近いものではないと手を出しませんし、引っ越してから図書館の質が上がったため借りて済ませるというのも選択肢の一つになります。...
とはいえこれに関しては一路一帯なのにインドやフィリピン、ベトナムと欧州やアフリカに進む経路上の国と揉めている現状、見通しは甘くないのではないかと思うのですけどね。
海の地政学的に日本って結構恵まれた立地なのでは?
ほかにもいろいろな航路が示されていましたが、欧州やアフリカから東に向かって終わりの地点であり、アメリカと中国の間にある日本って結構恵まれた立地なのかなと。
もちろん中国側に寄りすぎているために、台湾など東シナ海(南シナ海に次いで紛争リスクが高い場所と書かれてます)でなにかあったときに巻き込まれかねないリスクはありますけど。
でも、大きく開けている太平洋側をうまく活用することも可能な立地ですし、海底資源や海上を使った風力発電などの可能性も見いだすこともできるんじゃないでしょうか。
どうしても最先端でハイテクな宇宙分野に目が行きがちではありますけど、海というものを見直すきっかけとしていい本だと思います。


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