楽天IR戦記は会社のIRから見た市場の景色がわかる一冊
先日SBI証券の成り立ちについて創業者の北尾氏の「挑戦と進化の経営」を紹介しました。
挑戦と進化の経営を読んでいて、SBIグループがバイオ関連事業をやっていることをいまさら知る - 関東在住福岡人のまったり投資日記
マネックス証券、楽天証券、SBI証券の米国株式最低手数料の値下げ競争で各証券会社の証券口座数の推移なんかを調べたのですが、じゃあこういう推移になった流れとかは知りたいなと思いました。S...
タイトルは楽天IR戦記で、2005年に楽天入社後からのTBS株取得や財務危機、ストックオプション導入、東証一部上場などの内側をIR(インベスター・リレーションズ:企業が株主や投資家向けに経営状態や財務状況、業績の実績・今後の見通しなどを広報するための活動)の実録が書かれています。
著者の市川祐子氏はNECから楽天に転職後、約15年間にわたり、IR、資金調達及び東証一部上場準備を経験していて、経済産業省の企画委員も経験。
病気のために現在は楽天を退職されて、アライドアーキテクツ社外取締役をされています。
読んでいて感じたことは、10年前ここまでシナジー効果があると思えなかった、金融やカード事業に対するスタンスもわかって、楽天グループの中期から現状に至る歴史を理解するのにいい本だと思います。
同時に、株を買ってもらうために、IRが企業の実態を投資家に伝えることの大変さがよくわかりました。
どうしたら投資家に株を買ってもらえるか?
著者が入社直後のTBSの株価買収から、リストラ、東日本大震災など大きな出来事、大型資金調達や金融事業の過払金問題などの大きな動きがあったときに、楽天の本質的な価値を投資家に伝えて市場に向き合う様子が描かれています。
同時にこれを読んでいると三木谷氏の能力や先の展望は想像以上にすごいものがあるなと。
なぜここまで予測できていてヴィッセル神戸がカオスなのか不思議でしょうがないのですけど・・
メディアとネットの融合やECと金融事業をこちらの想像以上に前から見越していたのを見ますと、そう簡単にAmazonにやられるということは国内ではなさそうな印象を持ちました。
同時に周りに働いている人たちも優秀で、投資家にわかってもらえる投資家の考えを伝える技術だけではなく、企業の内部各所にしっかりフィードバックするということもできてるなと思いました。
あと、これは楽天の他の企業もやってるのかもしれませんが、海外の投資家のために説明会的なものも現地で行ったりしてるんですね。
もちろん海外企業の買収などの商談や視察も兼ねての面もあるのでしょうけど、現地まで説明しにいくんだと。
楽天のようにIRに力をいれてる企業が増えていくと日本企業も変わるかも
最後の章で四半期決算、資本コスト、ROEなどについて振れられていましたが、ウォール街のランダム・ウォーカーでも日本企業のROEの低さがやっと最低レベルを脱しつつあると書かれていました。
ROEの改善傾向と同時に、楽天のようにIRに力をいれる企業が増えていくと、日本企業に関しても変わってくるのかなと。
とあるポイントサイトでたまに株主総会かIRの練習?っぽいアンケートにあたることがあるのですけど、内容にこれといってインパクトのある企業にあたった記憶がないんですよね。
本を読んでいてそういった企業と比較して楽天は違うなともいましたし、東証一部上場やロードショーも臨場感ある文章で書かれていて、IRの業務を著者を含めてチームが面白そうに仕事をしている感じが伝わりました。
株主総会に行ったことはありませんけど、そういった場で報告される業績の資料を作ったり、発表したりしている人の業務の裏側が書かれているので、違った見方で企業を見るきっかけとなる本ではないかと思います。


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