ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第12版〉はNYダウが最高値の時期だからこそ読み直すべき一冊
ウォール街のランダム・ウォーカーは、図書館で1度借りてと3年前に出た11版を購入して持っているの計2回ほど読みました。
ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉を読んで
分厚い本ですが、投資を始める際に読んでおいて損はない一冊だと考えます。
そんなウォール街のランダム・ウォーカーの原著第12版が今月発売になりました。
11版持ってるから買う必要あるかと思う一方で、11版で新たに加わったものの内容に不満のあったスマートベータの項目が全面書き換えになってる点に惹かれて迷いながらも購入しました。
前の版が3年前なので覚えてないのもあるのでしょうけど、記述でがっつり削られた?と思しき部分もあるせいか、結構内容が変わってないか?という印象を持ちました。
バートン・マルキールは87歳ですが、新たに追加になった仮想通貨に関しても、ブロックチェーン含めて正論を述べていて、投資啓蒙活動に力を注いてる面も含めて評価されるべきでしょう。
個人的に12版で考えたことをまとめますと以下の4点ですね。
11章 スマートベータとリスク・パリティーではマルチファクターを評価していた
11章のスマートベータに関しては、11版では投資するならば、時価総額加重平均の小型株ETFを少しやるのを推奨という形でした。
12版では、大きな自己資金を運用している投資家の場合、分散投資の一環でスマートベータのマルチファクターやRPP(リスク・パリティー・ポートフォリオ)の保有を検討すべきという形に変わっていました。
レバレッジに伴う金融リスクを取るゆとりある投資家は、RPP(リスク・パリティー戦略)をポートフォリオの中に加えることで追加リターンが得られる可能性が高いとまで書いていて結構変わった印象ですね。
もちろん低コストファンドかどうかとあくまで運用の中心は幅広く分散された、市場インデックスファンドであるべきだという意見でしたが。
RPPに関してはレイ・デリオのブリッジ・ウォーターの全天候型ファンドが例に取り上げられていました。レイ・デリオに関しては結構皮肉っぽい感じ。
長期債にレバレッジをかけた結果を示されていましたが、かけない場合の結果も併記してほしかったですね。
スマートベータに関してはシャープレシオの向上からマルチファクターを評価していました。
結局、ファクター投資入門に書いてあったようにクオリティとかモメンタムとかバリューを組み合わせるのは悪くないということでしょう。
ただ、低コストという意味ではiシェアーズのLRGFは経費率0.20%なのでそれを例に上げればいいのにと思うところもありますし、スマートベータのマルチファクターも組み合わせにも留意が必要かなと思いました。
今後の株式のリターンはどうなるか?
13章インフレと金融資産のリターンでは1947~1968、1969~1981、1982~2000、2000~2009、2009~2018と書く時代で、株式よかった期間と悪かった期間の金融資産のリターンについてまとめられていました。
ハワード・マークスじゃないですけど、サイクルがあるなと思わせるものでしたね。
で、この章の肝はこの先はどうなるかということですが、中長期的に期待できるリターンのレンジを推定することは可能と断言しています。
マルキールの長期的な株価の考えをまとめると以下の通りです。
- 2009~2018年にかけての株式や債券が享受したような二桁のリターンを期待するのは当分の間無理だろう。
- 2018年末で優良社債の満期まで保有すると4.5%、10年物国債で約3%が期待できる。インフレが2%程度で続くと国債も優良社債もささやかな実質リターンをもたらす。
- 1960年末からの実績と比べるとかなり控えめ。今後インフレが加速した場合に債券価格は下落して、さらにリターンが低下するので魅力的とは言えない。
- 出発点の配当利回りと利益の期待成長率を足し合わせると、S&P500ベースの株式投資の総リターンは年平均7%弱と考えられる。過去と比較しても1926年からの平均10%を割る。
- 2018年中はインフレも金利も相対的に低水準であったので、平均よりは多少高い株価収益率と低い配当利回りは理に適っている。
- 長期的な株式リターンの変動の約40%は期初の市場平均PER水準によって決まる。
- CAPE指標はある程度信頼できるもので、7%弱という予想の1つの根拠になっている。
- 当分の間は比較的低リターンの時代が続きそうだ。
株式のリターンは2000年や2009年の底値からの上昇が寄与した年率10%とかよりも、現実的に6%~7%くらいと考えておいた方がいいでしょう。
過度な期待して過剰なリスクを取るとどうなるかは12版にも書かれていますし。
ニューヨークダウが最高値を更新した状況だからこそ、見直すべき一冊
リスクに関する記載も以前より増えた印象が個人的にあるのですけど、ある意味ニューヨークダウが最高値を更新して27000ドル台になったからこそ見直すのにいいのかなと。
仮想通貨が、チューリップバブル、南海バブル、世界大恐慌、日本のバブル崩壊、ITバブル、リーマンショックの後に加わったのは、またいずれ10年もしないうちに新しいバブルがどこかでおこるのでしょう(マルキールも私同様ブルックチェーン技術はいろんなものに使える面があるという評価)。
その教訓とすべき事例は定期的に見直してアクセルを踏み過ぎていないか自分の投資手法を考え直すのに有意義だと思います。
仕事でもプライベートでもそうですけど、調子に乗るといずれ足元をすくわれかねないので、勝って兜の緒を締めるという気持ちを忘れないようにしたいですね。
日本企業のROEは最貧国から卒業
巻末に翻訳者の井手正介氏のコメントが載っていました。ジム・クレイマーの書籍の翻訳や自著のある方です。
自著の中でROEこそ株式投資の総リターンの2つの構成要素の両方の生みの親とまで言い切ってましたが、2010年以降平均ROEが上昇を始めてROE最貧国を卒業できたと。
実際、ROEと日経平均には連動性があるそうです。
アメリカ、イギリスは軽く10を超えてますし、ドイツも9%台ですので、日本もそのレベルまで上げていくと色々と社会も変わっていくのではないでしょうか?
本の中では新興国もPERが低いということで今後有望とマルキールが書いてましたが、日本についても過小評価され過ぎではと思う点もあります。
とはいえ米国株が盛り上がってるから逆張りで新興国というのも、人口が減り始めてる新興国がある中では逆張りする価値があるのか?という面もあると思うので、結局行きつく先はマルキールのいう通り、リスクを考えて分散投資というのがベターとなるのかなと思いました。
今の時代誰でもインフルフルエンサー()になれますから、この人が買ってるからこの銘柄を買うというのではなく、本当に価値があるかを自分で考えて投資するというのが、インデックスファンドであろうが、ETFであろうが、個別株であろうがますます必要となるではないでしょうか。
その意味で投資を始めて期間が短い人であるならば、この本を一度よむことをオススメしますし、投資期間が長い人もリスクを見直すために読み直すというのも悪く無いではないかと考えます。


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