ゆめタウンの男が説く地域で一番になることの重要性
総合スーパー(GMS)というとイオンやイトーヨーカドーが思い浮かぶでしょうけど、これらの企業の営業収益費の営業利益率で見ると、2017年度の実績ではイオンが0.5%、イトーヨーカドーが0.2%と非常に小さい。
ところが単体の営業利益率が4.7%をたたき出している同業があるんですね。広島地盤のイズミです。
そんな営業利益率の高いイズミの創業者がどのような人生を歩んだのか?96歳にしてこれまでの自叙伝をまとめたのが「ゆめタウンの男」です。
大型ショッピングセンターのゆめタウンというと関西や関東にはなじみないでしょうが、中国地方ではトップですし、ダイエー衰退後の九州でイオン九州と熾烈な競争を繰り広げています。
海軍入隊後、海軍工機学校入学試験に合格したため船を降りたら、その後乗っていた戦艦は沈没。学校修了後、伊400に終戦まで乗艦していたら終戦で帰国と戦争を生き抜いた強運の持ち主でもあります。
そんな人物が闇市から年商7000億になるまでの過程を振り返ってるんですから面白くないはずがない。
今後の小売を考える上で重要な一冊だと思いますし、投資にも通じるところもあってオススメしたい一冊です。
攻めと撤退の先見の明
イズミという企業がなぜここまで大きくなれたかというと創業者の山西氏の攻めと撤退の先見の明にあるでしょう。
闇市→卸→スーパーという変遷もさることながら、それ以外にも攻めと撤退も見事なんです。
- 3号店は大阪に進出したが、本部から目が行き届かないので半年で撤退
- ミスタードーナツが日本進出した際には、いち早くフランチャイズに加盟
- 「小僧寿しチェーン」「ココス」など外食業態を続々とフランチャイズ展開したが、やがて飽きられるという判断から好調な状況であったにもかかわらず事業を手放す。
- ボウリング場やアイススケート場とプールを併設しようとしたが、飽きられるという判断から、急遽取りやめて中身は入れなかった。
- 平成になって消費者の嗜好はさらに多様化に伴い、新しいスタイルの大型店として登場させたのが「ゆめタウン」
- 東(岡山、兵庫)へ行くか、西(九州)へ行くかで、平野が多く人口密度が高くて伸び率の高い九州を選択。
- セブン&アイ・ホールディングスとの業務提携
競合他社が少ない九州を選択したのは見事で、ダイエー衰退期とも重なった結果、イオンモールだけでなくゆめタウンの存在感はここ20年で北部九州においてはかなり強まってると言っていいでしょう。佐賀の店舗とかかなりでかいですし。
上記以外にも九州進出後、熊本のニコニコ堂や北九州地場のスーパーマーケットのチェーンを子会社化も進めていて、ドミナント戦略としてもかなり優れていると思います。
ひふみ投信の藤野氏はローカルの企業をヤンキーの虎と評していましたが、こういう企業こそヤンキーの虎ではないかと。
地域で一番になることの重要性
地域で一番になることの重要性は、イオン見てても千葉に本社?ということとは真逆なのかなと思いますたし、福岡で大きくなってるのをみただけにとくに印象に残りました。
山西氏曰く総合スーパーという業種でも衣食住何でもここに来ればなんでも揃うという求心力はまだあるとのこと。
そのためにも初期投資でもハードやソフト面で妥協せずに、立地、敷地面積、建物の規模すべての面で「地域で一番」にこだわる必要があるとのこと。
また開店したら終わりではなく、環境の変化や時代の変化にも柔軟に対応する「再投資」の重要性も頻出でした。
これは投資にも通じることかなと読んでいて思ったのは、バブル期に拡大路線で失敗したダイエーやヤオハンではなく、まずは地に足をつけつつも攻めて大きくなったことですね。
まずは地に足をつけつつリスクを取りすぎない、環境の変化や時代の変化にあわせて再投資というのは、相場の雲行きが怪しくなった今だからこそ見習いたいことだと考えます。
イズミが成長した3つの理由
読んでいてイズミがここまで大きく成長した理由は以下3点をトップから下までが意識していたのが大きいかと。
「革新・挑戦・スピード」
「お客様に尽くすこと」
「従業員にとって働き甲斐のある会社を作ること」
とくに働き方改革的なものをかなり前から進めていた企業という印象を持ちました。
スピードだけでなく革新という要素も強い会社だと思いますね。
ここまでうまく歯車がかみ合ってきたことの根底は創業者の「人を喜ばせたら、その喜びは自分に返る」というのが大きいのかなというのも読んでいて感じました。
なかなか意識してもうまくできるものではありませんが、人生訓としても重要な言葉だと思います。
投資本としても自叙伝としてもすぐれていてオススメしたい一冊です。


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