世界史とつなげて学ぶ中国全史は、西洋史学観に縛られずに別の視点から中国を見直す一冊
香港の情勢が一気に悪化してて、実際に現地で撮られた映像を見ておりますと日本で報道されてるよりも深刻になりつつある印象です。
香港というのは中国と西洋をつなぐ土地でもありますので、中国も簡単に強制排除できないというのが大きいでしょうね。
そんな中国に関して現代中国に至るまでどういう過程を経てきたのかをまとめた、「世界史とつなげて学ぶ 中国全史」を読みました。
著者の岡本隆司氏は京都府立大学教授で、中国史関連の書籍を多数書かれている人です。
どうしても西洋史観で見てしまいがちですが、文明の発祥から現代までを王朝毎に書いていて、また同時代の周辺異民族や世界情勢も織り交ぜられていて非常に面白かったです。
個人的に興味深かった点をまとめると3点になります。
中国全史でまとめられていた重要ポイント
この本でまとめられていた重要ポイントをまとめると以下の通り。
- 3~4世紀と14世紀の寒冷化の影響。
- 階層の多元化と上下の乖離は世界的な寒冷化による14世紀の危機の時代と大航海時代頃から始まった。
- 民族間の共存を計ったのがモンゴル帝国
- ヨーロッパは14世紀以降、大航海時代→産業革命にいたって階層の多元化に答えを出した。
- 14世紀まで江南の・南方の人口が増えていたのが、一転して中原、北方の比率が上がり始めた。
- 寒冷化に伴う中央アジアと遊牧民世界のプレゼンス低下と海洋世界の比重増大→東西格差が拡大。
- 士庶構造からその間に様々な資格階層の人々が割り込み、中国社会はますます多元化複雑化。日本は非常に単一的均質的
- アジア史において政教分離は成立しにくい
- 日本は欧米同様中世は封建制→近代化で今日に至る。
- 中央と下層は乖離したまま、明代以降抱える東西格差の構造的な課題はむしろ増幅されている。
- 中国政府が恐れているのは、下層の人々が政権から乖離するとともに、富裕層が諸外国と強く結びついて国家を顧みなくなること。
- 今後中国はバラバラな社会をいかに秩序を保って共存を図るか。
無駄に広く、格差がありすぎて、上下の一体感がなく、内陸部と沿岸部の一体感がなく、国民意識の形成が難しいというのがよくわかる内容でした。
同時に世界史でも扱われない永楽帝より後の明の時代とフビライの後の元の時代は現代においても大きな転換点だったとわかります。
なぜ中国が近代に諸外国に負けに負けたのかという点もこれらの項目に通じるかと。
男子サッカーでアジア予選すら突破できない、ここ数年はACLでも外国人に相当な移籍金を使ってるのにも関わらず、日本勢に押され気味というのも階層とかにつながっているのでは?と感じました。
福沢諭吉が「近隣の支那・朝鮮でさえ余りにも前近代の体制に固執し続けているため、彼らの進化を待っていては日本が不当に立ち遅れてしまう。もはや待っている訳には行かぬ」と言った理由もよくわかります。
意外にも異民族支配に苦労していた清朝
現代の中国の領域は清朝を引き継いだものですが、康熙帝・雍正帝・乾隆帝と全盛期が長かった印象ですけど、その時代においても異民族の支配に苦労していたのは意外でした。
清朝は全盛期はかなり領土も広かったので、うまく治めていると思ってましたが意外でした。
米中貿易摩擦と歴史に見る、閉じられた中国と開かれたアメリカ - 関東在住福岡人のまったり投資日記
連休明けに米中貿易摩擦の協議が揉めてしまい株価も急落、為替も円高と令和の始まりでつまずいた印象です。とはいえ2019年になってからの上昇が大きかったこともあるので短期的な調整が起きるのは悪くないかと。...
それも一種の取り込み政策だったのかなとこの本を読んで思いました。
こちらが考えている以上に領土が広すぎると管理することが難しいのは、大日本帝国にも通じるものがあり、なぜ中国がウイグルやチベットで色々とやってるのかは見えてくるかと思います。
民族や階層も多元化複雑化しているのを見ますと、いつか暴発という可能性は香港以外でもありうると感じました。
毛沢東=明朝、鄧小平=清朝
最後に印象に残ったのは、毛沢東=朱元璋(明朝)同様農民生まれで農業重視、鄧小平=清朝的で経済重視というのは腑に落ちました。
大粛清とか知識人の弾圧というのも毛沢東と朱元璋は通じるところがありそうですし。
で、問題は現代で習近平はどっちなのか?ということ。毛沢東路線に走っているという話もありますが・・
仮に明朝に似た形になっていくとすれば、官僚の俸禄は低く、忠誠心の低下と汚職による腐敗を招いてましたので、階層が多元化した中では大きな騒乱が起こりうるかと考えます。
無駄に領土が広く格差がありすぎて、内陸部と沿岸部の一体感がなく、国民意識の形成に失敗したと読み取れましたが、逆に一体感が出てきたときに中国で民主化が起こるのかもしれません。


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