「イスラム2.0」を読んだが、アジアや欧州でもイスラム教が投資・経済や政治に与える影響は大きくなっている
昨年スイスとイスラエルという単一国に投資をするようになりましたが、この2カ国は先進国。
それ以外にも新興国の単一国に投資しようと考えて5年以上経ってるのですが、イスラム国がシリアで勢力を広げていたときは「イスラムテロリスク」ということで二の足を踏んでる状況でした。
あれから時間が経ちイスラム国に関しては衰退していますが、中東の状況は日本だとあまりニュースになりません。
年明けからイラン問題のニュースを見ていても、殺害されたイランの組織の人間は他国でテロなり工作を行ってるのに、殺したアメリカが悪いという意味不明なコメントの識者はちょっとおかしいだろと思う面もありますし。
そんな中、ネットの記事でイランについて書かれた記事が気になった飯山陽氏の「イスラム2.0」を読みました。
飯山氏は上智大学アジア文化研究所客員所員で、イスラム思想・古典イスラム法の文献研究者として、中東情勢やイスラムに関係する世界情勢の分析を行っています。
東南アジア、南アジアで自爆テロが頻発、ユーチューバー系自爆テロ、ヨーロッパの治安悪化、イスラム教による女性差別、LGBT差別など、イスラム法を客観的に分析し、それに基づいたイスラム教徒の価値観や行動様式を解説しています。
単純に日本人はアラブ人から嫌われてないので、アメリカの依頼で中東に自衛隊を派遣するのは反対という人もいますが、そもそもイスラム教では無神論者、無宗教者などは迫害対象で、アフリカや中東で日本人がテロに巻き込まれた理由は納得いくものでした。
イスラム教という日本人にはあまりイメージのできない宗教のリアルな負の面を読者に突きつけてくる衝撃的な本です。
同時にイスラム教がアジアや欧州でも投資・経済や政治に与える影響が大きくなっている点は、投資を行う上でも無視できないものになりつつあるなと。
ヨーロッパのイスラム化とリベラル・ジハード
厳格なイスラム教徒にとって西洋的なリベラリズムは絶対に受け入れられないものというのが書かれています。
なぜ欧州で極右が台頭するのかと日本にいれば考えるのですが、以下の2点が大きいんだなと。
- グローバルエリートが多様性と言うがイスラムは多様的ではない。
- 移民の性犯罪激増、定住すれども同化せず、移民先の法律よりイスラム法
イスラム教徒人口の比率は2016年でヨーロッパ全体で4.9%まで上昇しています。
フランス8.8%、スウェーデン8.1%、ベルギー7.6%、オランダ7.1%、オーストリア6.9%、イギリス6.3%と主要国で比率は1割に近づいていて、移民政策を維持すれば欧州全体で2050年に10%台になるとのこと。
さらにヨーロッパでは「同化しない」イスラム教徒たちが、「移住」と「多産」により各国で議席を獲得しはじめるなど、民主的なイスラム化をすすめる「静かなるジハード」が進行し問題となっている。
また、イスラム教徒が集住することで生まれたノー・ゴー・ゾーン(警察管理外地域)の増加、学校のイスラム化など、これまでの西洋的価値観では対応しきれなくなり、その失敗が白日のもとに晒されている。
福祉先進国の北欧でも極右が台頭しているのはなぜなのか?と思うところがありますが、リベラル的な意見では対処できないレベルに達したのが大きいんでしょう。
この状況下でEUから離脱したイギリスに関しては、かえって上手くいく可能性もあるのかなと読んでて思いました。
原理主義的になっていくインドネシア、うまく押さえ込めているエジプト
新興国の中で投資をしたいなと思っている国の一つに「インドネシア」があります。
20年前のインドネシアは、イスラム教徒でも普通に喫煙し、飲酒していたそうです。
ところがいまでは「禁酒法」が出たり性犯罪の厳罰化、イスラム聖典への冒涜に端を発した大規模デモや暴動が起きていて、9割近くを占めるイスラム教以外への宗教マイノリティへの寛容度低下しているそうです。
マレーシアやブルネイなどの隣国はイスラム教を国教としていますから、無神論は違法で逮捕される可能性もあるインドネシアでこの傾向は気になるなと。
インドネシアはテロも結構起きているのですが、かつて一部の宗教エリートたちのものであった知識や解釈が、翻訳・検索機能により誰でも容易に直接アクセスできる時代となったため、「啓示」は宗教エリートの手をはなれ、一般信徒の原理主義化が加速しています。
イスラム法>国の法律となった場合、国の体制が持つのか?と思いますが。
対称的な例としてエジプトも例も挙げられていました。エジプトもインドネシアに似ていてイスラム教が9割、ビザンツ時代などの影響からキリスト教がエジプト土着のコプト教会など1割います。
アッ=シーシー政権はコプト教会と友好関係で、ムスリム同胞団を抑えていて、うまく「イスラム2.0」の現象を抑えています。
アフリカでは屈指の経済規模ですし、一応ETFも「ヴァンエック・ベクトル・エジプト・インデックス・ETF(ティッカー:EGPT)」あるので、面白そうだと思いました。
イスラム化の反動か、インドでヒンドゥー教の原理主義者も立場が強まっていて、イスラムに対するカウンター的行動がエスカレートするリスクも考慮が必要かと思いました。
イスラム教徒の人口に関して調べてみたのですが、アジアで比率が低そうなのはフィリピンやベトナムといったところ。ただし、ベトナムでもイスラム教は認可されているようなので一部はいるようです。
ともあれ全てのイスラム教徒がそうとは思いませんが、イスラム2.0の状況を知れたことは大きかったです。
世界経済に与える影響も大きくなっていく中で、イスラム教をどう考えるかは、新興国株式に投資をする人だけでなく、欧州などでも無視できないレベルにあることを気づかせてくれる貴重な一冊だと思います。


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