タイラー・コーエンの「大分断」に見る現状満足階級とアメリカの実情
アメリカの反人種差別デモはすっかり話題にならなくなってしまいましたが、日本でも50~60年前にデモやってた人間の一部が最終的にテロリストとなったのを見ると、過激な人間が暴走するのは必定だったと言えるでしょう。
同時にどうもデモが起きてる地域と大統領選挙の得票率の分布見ると一定の傾向が見られるので、なんだかなぁと思う部分もあります。
まぁ、日本のtwitterでもたまにトレンド入りしているキーワードがもろ扇動になってるのと同じことだと思いますが。
ただし、アメリカの実態はどんなものだろうというのは気になったので、タイラー・コーエンの「大分断」を読みました。
タイラー・コーエンは経済学者で、エコノミスト誌から「世界に最も影響を与える経済学者の1人」とも言われてる人物です。
そのタイラー・コーエンは変化を嫌う「現状満足階級」の台頭が分断を拡大させ、イノベーションを減退させると説きます。
現在のアメリカで起きていること
コーエンから見た現在のアメリカで起きていることをまとめると以下になります。
- アメリカ社会があまり変化しない
- リスクを避けたがるようになった
- 財政が硬直化し、民主主義のプロセスが蝕まれている。
- 移住が不活発
- 生産性の高い年に新しい建物が建ちにくくなった。
- 所得と社会的地位による社会的分断が進んだ
- 安全とリスクへの関心が高まった。
- 新興企業の設立が減り、生活水準の上昇ベースが鈍化した。
これらの要因によって、平穏で安全で平和な社会になったものの、新しい活力源を生み出す能力を失いつつあり、社会的・経済的停滞は一時的な現象ではないと指摘しています。
黒人反差別デモが起きてる場所と民主党への投票率の高さがある程度一致しているのも、住む場所が人種や収入によって固定化・集中化しているのが要因だと指摘していますし。
そして、その平穏で安全で平和な社会も分断の影響で終わる可能性もあるとのこと。経済危機的な可能性もあるとまで書いています。
コーエンが新興企業のイノベーションが2000年代ほどすごいものがないという考えというのもあるでしょうけど、否定はできない側面はあるので、アメリカという国の今後を展望するうえで頭の片隅には置いておいたほうがいいのかなと思いました。
ただ、欧州や日本といった他の先進国ほど新興企業の設立やリスクを取るってことに対して積極的なのは変わってないと思うんですよね。
それが変わっていくのかは米国株中心に投資をする人は動向を追っておいたほうがいいでしょう。
現状満足階級は先進国ならば結構な割合でいるような気がする
現状満足階級とは、移住や転職などの変化やリスクを避け、問題解決に動くことも少ない不活発な人々を指す、コーエンの造語です。
私も典型例っぽい人間かもしれません。一応地元からは離れていますが、地元に戻りたいと考えていますし。
ちなみにコーエンは序文で日本は現状満足の先駆者で、他のどの国よりも上手に現状満足の時代を生きていると皮肉なのかほめてるのかわからない言及をしています。
ただ、この傾向は先進国ならどこでも見られるような現象なのかなとは思いました。
同時にコロナの影響で移住や転職っていうのが変わってくる可能性もでてきました。
これが現状満足階級にどのような変化を与えるかは大きいんじゃないかと考えます。
一番重要なことは教育、所得、人種などの面で進むタコツボ化=分断は民主主義を停滞させて、不自由さとリスクが増してるんじゃないかというコーエンの指摘ですね。
これは人種の面抜きにすると日本にも当てはまることとなりますので(日本の場合オールキャッチアップの自民党以外の政党が50年前の思想に未だに浸かってるのもある)、国内株に投資をするにしても投資をする際にはタコツボ化してないか?という観点は必要かもしれないなと思いました。


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