ラディカル・マーケットに書かれていたインデックスファンドの規制案
インデックスファンドかアクティブファンドかという論争がありますが、インデックスファンドの資産がどんどん増えていく傾向は今後も続いていくでしょう。
NISA的な制度や確定拠出年金のような制度は今後より重視されていく方向になるでしょうし。
そんな中、インデックスファンドの構成に関して規制しようという話を本で読みまして、欧米ではこういう意見もあるんだなと思いましたね。
読んだ本は「ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀」。
未来社会へのアイデアとしてオークション型の資本主義を提案していて、私有財産は否定され、必要な者同士がシェアする仕組みが未来社会における資本主義の原理となることを説いた本です。
おもに5つの政策が提案されていて、①所有権の部分共有による切り崩し、②投票制度の改革、③移民制度の改革、④機関投資家の力の切り崩し、⑤データを労働力としてみる です。
内容は一理はあるんですけど、②の投票制度の改革なんかは、まだ選挙期間中じゃなかった6月、職場での仕事中にあまりにもうるさい某赤い党に切れ気味の人が選挙期間調べたら違反じゃないのか!というのを見たので、流石にどうかと思いました。
全般的にラディカル(急進的)な提案なのですが、④の機関投資家の力の切り崩しの点は、ヘッジファンドの規制のことかと思ったらそんなに甘いことはない。
むしろインデックスファンドの中身の規制まで踏み込んだ内容だったんですね。
4章機関投資家による支配を解くで上げられてるのはバンガードやブラックロック
4章は機関投資家による支配を解くことに関して提言されてるのですが、そこで名前を上がってるのはヘッジファンドかと思ったら、意外にもブラックロック、バンガード、フィデリティ、ステート・ストリートといった面子。
機関投資家全体(これにヘッジファンドが含まれるのかはよくわからず)でアメリカ株式市場の4分の1を保有していて、他の主要な国の株式市場も支配されてるという形で書かれています。
ところがこれらの企業のインデックスファンドの分散投資の結果以下の悪影響があると指摘します。
- 消費者には値上がりをもたらす。
- 投資とイノベーションを減少させている。
- 賃金を押し下げる恐れもある。
- 例えばデルタ航空の株式の6%をバンガードが保有しているが、支配権をいいようにも悪いようにも使える。
流石に4番目の件は飛躍しすぎな感じで、そういうことをやらないとは思いますが。
機関投資家によるインデックスファンドの株式の所有を制限する
では、それにどう対処するかというと機関投資家による株式の所有の制限を提案しています。
まず業種が頃なる企業の株式を保有することは認めるということで、「ブラックロックはユナイテッド航空の株式を好きなだけ保有するけど、デルタ航空などは一切保有しない」「ペプシの株式も好きなだけ保有できるがコカコーラは保有できない」などを提案しています。
そして、「寡占状態で1社市場の実質支配企業の株式を保有し、コーポレートガバナンスにかかわっている投資家は、市場の1%以上を所有することはできない」というルールも提案しています。
これらの提案で分散投資に及ぼす影響が小さいと以下の3点とも書いてあります。
- 業界内での分散投資が制限されたとしても、この効果は小さい。
- 分散投資が悪化することになるとする理由はまったくない。
- 一定の条件を満たせば、機関投資家は異なる産業間でなく、同じ産業内でも持ち分を保有することが認められる(インデックスファンドの例外規定を利用することができる)
投資家は独占を形成してリターンを最大化するので、市場は集中化する危険がつきまとうということで、政策による規制を訴えているわけですが、確かに格差の是正には多少なりとも効果がありそうです。
ただ、個人的に機関投資家の定義はどうなのかなと思いました。
とはいえレイ・ダリオ率いる世界最大のヘッジファンドがバンガードやブラックロックのETF使って投資しているのもまた事実で、書いてることが一理あります。
著者2名がシカゴ大の教授やマイクロソフト首席研究員なのを見ますと、いずれ政策化される可能性はアメリカの民主党政権になった場合にありうるのかもしれません。あるいは欧州のどこかの国で。
配当課税が上がるというのはいずれ起こりうるとは思ってますけど、さすがにこういうインデックスファンドの規制まで踏み込んだ提案までなされてるとなると、各国の年金絡みの制度にも影響を与える議論なのかなと読んでいて思いました。


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