「限界費用ゼロ社会」は5年経ってどうなっているのか?
個人的にAmazonで売れてる本は時間遅れてでも読みたいと思ってるので、図書館なんかでなかなか回ってこなくても予約してるのですが、落合陽一の「2030年の世界地図帳」をようやく順番が回ってきたので読みました。
SDGsについてわかりやすく書かれてると思いますし、池上彰との対談も載ってるので興味ある人は多いだろうなと。
最近の池上氏はすっかりテレビ芸人化して本も出しまくりで内容が微妙になっちゃってる人なので、その後釜でも狙ってんのかと思いましたが、落合氏はテレビが嫌なようです。
本を結構読んでて結構な引用がされてるのですけど、その中でこれまで読んでみようか迷ってた「限界費用ゼロ社会」が載ってたので興味を持ちましてこのたび読みました。
ジェレミー・リフキンはアメリカの経済社会学者ですが、ドイツなどの首脳・政府高官のアドバイザーを務めていて、SDGsもこの人の考えた政策が反映されてる感は強いです。
内容としてはこれから起きる限界費用がゼロに近づく社会に関して大変革のメカニズムを説き、確かな未来展望を描かれていて、個人的にはESG投資とかの流れが来ているのもよく理解できました。
で、この本が日本で出版されてもうすぐ5年なわけですが(本が書かれた時期からはもっと経ってる)、コロナでちょっと方向性が変る面もあるかなと読んでいて考えました。
エネルギーやシェアリングは状況が変わっている
エネルギーに関しては自然エネルギーの活用に関して非常に積極的で、これをメルケルが取り入れてドイツの脱原発政策につながってるのがよくわかります。
ただ、以下のような事象も出てるので、いずれ改善していくというのはポジティブすぎやしないかと思うんですよね。
脱原発を選んだドイツでCO2排出量が急増? 「致命的な誤算」を示す研究結果と、米国への影響 | WIRED.jpwired logowired logo
2022年までに脱原発を決めたドイツに発生する隠れたコストを明らかにする研究結果が発表された。脱原発によって急増するCO2排出量と社会的費用の「致命的な誤算」を指摘するこの結果は、原子力エネルギーの行く末が混迷を極める米国に大きな教訓をもたらしそうだ。
欧州は台風が来ないかもしれませんが、風力にしろ太陽光にしろアメリカやアジアでは気候が書かれた時期よりも明らかに変わっていて、台風とか豪雨の影響無視できない思うので、両方ともバラ色ではないと思います。
とくに九州は毎年のように豪雨になってますけど、山肌のソーラーは2次災害どこかで起こす可能性があります。ちゃんと建ててるところもありますが、建設に反対運動やらでゴタゴタしたと場所とか危ないでしょう。
共有型経済について多くの語られていて、シェアリングに関しては家、ホテル、カーシェアの伸びは当たってたと思いますけど、コロナでどう変わるかなと。
個人的には車は地方ならば必要という考えの方に傾きましたけどね(福岡市内に住んでたとしても結構いるかなと思う)。
いずれ状況は元の日常に戻る方向だとは思いますけど、完全に戻ることもありえないので、コロナはシェアリング関連の転換点になる可能性は結構あると思うんですよね。
協働型コモンズへの一大パラダイムシフト
特に重要な内容を3点あげるとすれば以下かなと考えます。
- コミュニケーション・エネルギー・輸送の垂直統合型構造から水平展開
- 金融資本偏重から社会資本偏重
- 希少性から潤沢さへ移行し、持続可能な経済成長を目指す
結果的にこの流れで限界費用がゼロに近づき守れなくなる企業は淘汰されるとのこと。
2番目なんかはESG投資にも関わることですし、3番目はSDGsの考えの根幹ともいえそうです。
実際、金融関連に関してはこの5年で本に書かれてある通りに進んでる面は強いでしょう。
ただ、結局はこの考えを取り入れることができた企業が、さらに大きくなるという可能性までは言及がなかったですね。結局、企業がより寡占の方向に向かった場合にどうなるのかは気になりました。
ちなみにビットコインなどの仮想通貨の話もクラウドファンディングなどと絡めて書かれてありましたが、この本が出された当時にビットコインに興味を持っていたら、仮想通貨でウェーイウェーイ系がいなくなったいまでも大きくプラスだったでしょう。
だからこそこういう本も読んでおかないといけない事象かなと思いますね。
あと数十年は移行期間である
3Dプリンターの実用化は進んでるでしょうし、ロボット関連の開発も進むでしょうから、文字通り従来の仕事がなくなってくのは間違いないわけですが、リフキン氏はあと数十年は移行期間であると書いてました。
そして、今から生まれる子供たちは全く求められる能力のレベルが違う職種になると。
であるならば、いま30代とかの人間は資産運用+そのときの仕事(淘汰される仕事は残った仕事への移行)で乗り切るのは1つの選択肢かなという印象を持ちましたね。
限界費用ゼロだと企業側の利益も稼げなくなる会社が増えるため、行き着く先は「隷属なき道」でも紹介されていた、ケインズの1日3時間労働なのかなと。
隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働
posted with ヨメレバ
ルトガー・ブレグマン/野中 香方子 文藝春秋 2017年05月25日頃
協働型コモンズですから、労働もシェアという志向になるでしょうし。
こういう本の情報を知るのは翻訳版で時間差が出るのは仕方ないですが、アンテナ張っておいて比較的出てから時間がたってない時期に読むというのは、投資やビジネスでも役立つかなと思わせるだけの一冊でした。


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