金融危機後の負の複利を避けるための「配当成長株投資のすすめ」
8月終了時点の資産集計をしたときに、ポートフォリオ内でとくに上昇が目立ったのはバンガードの米国増配株ETF(ティッカー:VIG)でした。
米国外先進国株ETFのカテゴリでも増配ETFのVIGIは結構早くプラ転してる状況で、増配の好調さを感じてる今日この頃です。
そんな中、個人的にぴったんこなタイトルである「配当成長株投資のすすめ」という本がパンローリングから出たので買って読んでみました。
著者のデビッド・L・バーンセン氏は資産管理会社ザ・バーンセン・グループの創業者兼CIOで、バロンズやフォーブスやフィナンシャル・タイムズでは常に全米のトップアドバイザーの1人にランク付けされている人です。
投資の神髄とは、資産を増やすことではなく、資産をいつ、どのくらい引き出すかであること。そして殖やした資産をいつ引き出し、どのように使うかまでを考えたポートフォリオの作り方が書かれていて、個人的に共感できる面が多かったです。
投資対象としては「年100回配当」投資術に近いものがあり配当成長株や増配重視という感じです。
とくに配当に関するデータが多くて、個人的に印象に残った点をまとめますと以下の2点ですね。
興味深い配当データの数々
先週紹介しましたが、S&P500の10年単位で見たS&P500のトータルリターンに対する配当の寄与度に関しては、配当がここまでトータルリターンに貢献するんだなということがわかり、興味深いデータでした。
同時に配当再投資重要だよねと思わせるのに十分な結果かと。
10年単位で見たS&P500のトータルリターンに対する配当の寄与度 - 関東在住福岡人のまったり投資日記
海外ETFのポートフォリオで株式部分に関しては米国株の増配(VIG)と高配当(HDV)がコアになっています。で、その2つのパフォーマンスはというと前者の増配がここ数年圧倒している状況です。個人的に昨年から米国外の増配(VIGI)と高配当(VYMI)にも投資してますが、増配の方が好調。HDVに関しては銘柄選択含めて投資しているのもありますけど、米国外だけで見ると増配の力強さを感じますね。...
これ以外にも配当に関する興味深いデータが多くて、これだけでも買う価値あったなと。
洋書なのでタイムラグがあるとはいえ比較的最新のデータでしたし。
以下のデータも興味深かったです。
- 4章:配当と再投資の引き出し
- 6章:配当政策別のS&P500構成銘柄の年平均トータルリターン
- 6章:1971年以降のユーティリティセクターとハイテク株のトータルリターン
- 8章:自社株買いと配当と利益
- S&P500,Stoxx600,日経225の配当性向
- 国際市場における配当成長株
- 世界の利益成長率
自社株買いのデータは1章丸っと使われててそういう関係なんだと思いました。
あとは米国株にフォーカスはしているものの、巻末で日本株も新興国株も配当成長の機会はあるよとポジティブに書かれてたのも印象的でした。
ちなみに2016年頃まで日本株には関心なったバーンセン氏がそう書いてるのはなかなか面白いなと。もちろん人口動態などは注意が必要とは言及していますが。
利益を増大させ、その利益から株主に支払う配当を増大させる企業に対して投資をし、配当再投資する
配当成長株への投資を説くと同時に、資産をいつどのくらい引き出すかまで言及されていますが、個人的に以下の2つの考えは共感できました。
マーケットタイミングや銘柄選択の文化の弊害から逃れた投資家が取り組まなければならない大きな「リスク」が市場のボラティリティであるならば、配当成長株投資によって、その「リスク」は引き出しを行う者にとっては完全に許容できるようになるとわたしは考えている。
強気相場は弱気相場と同様に賢明な思考をゆがめる、つまりうまくいかないときに愚かな行動をとり続けるよりも唯一劣っているのは、うまくいっているときにその行動に留まることである。
ただ、高い利回りの銘柄に投資するわけではなく、利益を増大させ、その利益から株主に支払う配当を増大させる企業に対して投資をするというスタンスを継続するということに個人的には惹かれましたね。
Hiromeさんあたりが提唱された投資の手法に近く、利回りや配当成長から条件でピックアップして、配当性向・バランスシート・利益のシクリカリティ・フリーキャッシュフローの分析と業務の定性分析・個別要因(成長の触媒や正当な評価を受けてないストーリーがあるか)を分析して、該当する個別銘柄に分散投資+配当再投資をすることを提唱しています。
そういうのが手間であるならば増配ファクターのETFに投資をするというのがいいのかなとも思いましたね。
説明でもクオリティーという単語が出てきましたが、ESG投資なんかもファクターに組み入れた状況では、クオリティー要素もつ配当成長株っていうのが強調できる時代になるかもしれません(実際増配株のファクター要素はクオリティーのスコアが高い)。
第2次ハイテクバブルになりそうなご時世ではありますけど、生き残った企業はいずれアップルやマイクロソフトのように配当出すようになるでしょうから、それに惑わされずにやる投資手法として悪くないかなと思わせるものがありました。
ともあれ配当成長株に限らず配当に関して考える上で、貴重な一冊だと思います。


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