シリコンバレーの金儲けで重要なのは「失敗の肯定」と「ゴールドラッシュ時のリーバイス型のビジネス」
アフターコロナを見据えての動きも本格化しつつある状況ですが、その中でハイテク株の上昇は先月まで目を見張るものがありました。
中心となっているのはシリコンバレー発の企業となるのですが、その歴史や文化といったものを整理しておきたいなと。
で、タイトルに惹かれて「シリコンバレーの金儲け」を読んだのですけど、 歴史学、人類学、金融、経済などがうまくまとめられていてよかったです。
著者の海部氏はシリコンバレーに数十年以上コンサルタントとしてやってる人から見た内容でかなり新鮮な感じもありましたね。
社会格差の状況から、ベンチャーキャピタル、2010年代の動き、日本企業との関係なども書かれているのも好感をもてました。
で、結局シリコンバレーの金儲けの本質はなんぞやとなると「失敗の肯定」と「ゴールドラッシュ時のリーバイス型のビジネス」になるのかなと。
「失敗の肯定」と「ゴールドラッシュ時のリーバイス型のビジネス」
アメリカの歴史で、スペインが来た時代から、成長の歴史までがまとめられているわけですが、アメリカが「必死で金儲けをしようと頑張る人たちが事業として作り出した国」ということがわかります。
あとは国の成立過程、新大陸の発見から新技術の開発までリスクマネーが流れる文化があるのも大きいかなと。技術ベースの金儲けという文化もあるようですし。
日本に関して、アメリカとあまり変わらない時期(1860年以降)に国内市場を統一したものの、既存技術を取り入れるという立場だったため、「ハイリスク」な投資をするノウハウもOKな人たちも少なく、それが保守的な要因じゃないかというのはアメリカ現地に長くいる人の興味深い指摘かなと思います。
同時にハイリスクを許容する文化だからこそ、「失敗の肯定」する文化があるのも大きいかと。
ベンチャーキャピタルもハイリスクだけどポートフォリオ的に投資をするので、失敗してもOK的なところもあるとのこと。
複数回破産したトランプが大統領なわけですし、ヒラリー・クリントンに勝てたのはこういう土壌があるんじゃないかと読んでいて思いました。
また、「ゴールドラッシュ時のリーバイス型のビジネス」というのが今の時代も重要じゃないかと。
ソフトウェアは世界を食べ続けるという例えを海部氏が使ってるのはまさにゴールドラッシュ時のリーバイスを表しているでしょう。
結局、2000年代のネットビジネスの中心的なモデルが「広告」「物販」だったわけですが、GAFAに支配されて従来企業は打撃を受け、新規参入余地がなくなりつつあるなかで、サブスクリプションが主流になってる状況。
となるとGAFAに抑えられた分野以外は、「ソフトウェア」の金型効果による効率化が富の源泉になるでしょうし、ゴールドラッシュ時のリーバイス型のビジネスが中心となってくんじゃないかと。
次に何が来るか(Next Big Thing)?
海部氏には日本企業に限らず次に何が来るか?ということを聞かれるそうですが、iPhoneはダメだと書いて予測を外したりしているので断言していないところは逆に好感が持てました。
その上で主な意見を抜粋すると以下の通り。
- ソフトウェアの勢いは強くなる。
- AIの出口プロダクトとして、自動運転は思ったより時間がかかりそう。
- バイオ/医療は引き続き期待が高い。
- AIは魔法にあらず。
- 人の仕事を奪う敵としてAIが特別視されるのはちょっと変。
- 次(Next Big Thing)をドライブするはずのコスト構造を大きく変える可能性のあるインフラの変遷がいまのところ見えない。
シリコンバレーで多くを見てる人がこういう意見だというのは参考になるでしょう。
ロボットに関してそこまで記載がなかったのでもっと知りたかったかなとは思いましたが。
技術的なものはどう転ぶかわからないが、バイオ・医療は有望というのは間違いないかなと印象をもちましたので、それは投資に反映させていきたいと考えました。
ちなみに最後の方で日本とのかかわりで、日本がささやかに復権しつつあるとのこと。欧州が不安定で、中国は信用度が落ちて相対的に上がってるそうです。現地の人から見てそうならばポジティブかもしれません。
もっとも文化的なものを日本が取り込む姿勢も必要じゃないかと思いますがね。
ともあれシリコンバレーの歴史・文化から、現状・未来・仕組みなども詳細に書かれていて、ハイテク関連に投資する前に読んでおくのにもってこいの一冊だと思います。


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