1988年以降、年間平均66%とマーケットを解読した天才数学者は何者か?「最も賢い億万長者〈上〉」
あらゆる投資対象の値動きをプログラム化して価格変動パターンを割りだし、短期売買を集中的に積み上げる手法をとってるファン
ドは増えていて、数学者や物理学者が金融に進むのは損失だと「隷属なき道」あたりでも批判されてました。
そんな手法を取るヘッジファンドの中で有名な「ルネッサンステクノロジーズ」という会社がありまして、わたしは「ファイナンス理論全史」で初めて知りました。
サミュエルソンがルネッサンス本社に迎えられたとき、「どうやら、その連中(マーケットに勝てる秘密を知っている)はここにいたようだ」と発言したそうですが、ルネサンスは社員に退職後もあまり多くを語らせないよう、30ページにおよぶ鉄壁の秘密保持契約にサインさせていてなかなか内情が出てこない。
そんな中、このたび関係者に丹念にインタビューし、ついに創業者のシモンズにも接触して、創業者のジム・シモンズについて書かれた「最も賢い億万長者」が出版されました。
上下巻に分かれていますが、上巻はシモンズの生い立ちから、起動に載っていよいよ株式の投資にも乗り出すというところまでが描かれてます。
下巻に関しては明日記事にしますが、個人的には生い立ちから描かれてる上巻の方が読み物としては面白いかなと思いましたね。
米国安全保障局をクビから大学経由で金融業界に入る
1988年~2018年の運用収益率39.1%、運用収益10兆円を超える会社ですが、会社の創業に至るまでの紆余曲折がありました。
シモンズは数学者としてキャリアをつんで、幾何学界の栄誉とされるのオズワルド・ヴェブレン賞を受賞していて、「チャーン・サイモンズ形式」は天文学や物理学でも多用されています。
その後米国安全保障局に転職した後、暗号解読の仕事に携わり、これがアルゴリズムやPCへの造詣を得たわけですが、ベトナム戦争からみでクビに。
クビになった後、大学の数学科を立て直したあとにヘッジファンドを参入します。
設立が1980年代前半になるわけですが、ほかの投資家がまだ直観や本能や昔ながらの調査に頼って予想を立てていた時代に、シモンズはいち早く、山のようなデータを掘り下げて高度な数学を駆使し、最先端のコンピュータモデルを開発を始めました。
最初の2年は上手くいったものの、その後は試行錯誤の連続で上巻はその過程も詳細に描かれています。
40代までに、シモンズ自身がアルゴリズムとPCの重要性を理解していたことと、大学の数学科を立て直した際に、研究者の引き抜きを経験したのが、会社を発展させる上で大きかったと思います。
割と数学者は個性が強くまとめるのが大変な印象を本からは受けるのですが、周りの力をうまく使う才能もあった印象を持ちました。
同じ数学者としてエドワード・O・ソープとは、研究の興味の対象が変わること、株式市場において確率と統計に関する知識を活用していることから共通点が多いです。
システムの判断に従えず、自分の主観を入れてトレードして失敗している
30年前とかのレベルになるとデータも手入力などで、計算を行うマシン性能も限界がありました。
その頃はアルゴリズムが間違えてる可能性もあるとシモンズも感じているのか、システムの判断に従わずに主観を入れて売買して失敗しているのは興味深かったですね。
資産規模がそこまで大きくない時期で、失敗することもあったので、どんなに賢くても不合理なことをやるんだなと。
同時にそこからアルゴリズムは進化しているわけですけど、すべてが正しいわけではないということとデータの見方は知識含めて持っておかないとダメなんじゃないかと思いました。
数学者+投資家の本を読むとほんと数学って大事だよなと思うので、もう一度学習したいなと思うんですよね。
ともあれシモンズという人物の物語としても、ヘッジファンドの物語としても面白くて、秋の読書にオススメしたい一冊です。


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