100回中50.75回しか当たらないが億万長者になれる?「最も賢い億万長者〈下〉」
1988年以降、年間平均66%の収益率を上げるルネッサンス・テクノロジーズ。
その創業者ジェームズ・シモンズの生い立ちとルネサンス・テクノロジーズの創業期を描いた「最も賢い億万長者〈上〉」を紹介しました。
上巻の後、株式にも投資をするようになり、2018年までのパフォーマンスは以下の通りで、ITバブルやリーマンショックも関係なしといった状況です。

では、その間の市場をルネサンスはどうやって乗り切ったのかを描いたのが「最も賢い億万長者〈下〉」です。
正直、上巻と比べますと14章以降の政治関連はいらなかったんじゃないかと思うのですが、13章まではアルゴリズムがさらに改良されてマーケットを解読している感が伝わってきて面白かったです。
とくに市場が暴落したときの状況は非常に興味深かったですね。
ルネサンスのファンド、メダリオンの運用方針
1997年頃から株式に投資をするようになったそうですが、当時はシグナルの3段階のステップを踏んでたそうです。
- 過去の価格データの中に異常なパターンを見つける
- アノマリーが統計的に有意で、時間経過に関わらず一貫していてランダムではない。
- 特定されたその価格の挙動を合理的な方法で説明できるか。
個人的に理詰めで運用するならば、これは結構いまでも役立つかなと思いました。
で、そこから20年経っていまは詳細がわからないものの、証言によると以下の運用を行っているそうです。
- 「100回中50.75回しか当たらないが、50.75回は100%当たる。そうすれば億万長者になれる」
- 投資商品に影響を与える要因はもっとたくさんあって、その中には容易には見つからない物や、ときには道理に合わないものもあると結論づけた
- 「非効率性はものすごく複雑で、市場の中にいわば暗号として隠されている。ルネサンスはそれを解読している。長い時間軸、様々なリスク要因、いくつものセクターや産業に渡って見つけている」
- あらゆる力の間に確実な数学的関係性が存在すると結論づけた。
- 「企業同士は複雑な形で互いに結びついているのだから、そのような関係性は必ず存在する。その相互関連性はモデル化して精密に予測するのが難しく刻々と変化する。ルネサンスのマシンは相互関連性をモデル化して、その振る舞いを時々刻々と追跡し、価格がそれらのモデルから外れたと思われたときに賭ける」
- 「この株が上がるだろうかとか下がるだろうか説明できるような個別の賭けは市内。どの賭けも、ほかのすべての賭け、リスクプロファイル、そして近い将来または遠い将来に予想される行動に基づいて決まる。それは巨大で複雑な最適化計算であって、その前提となっているのは、未来を十分に正確に予測すれば、その予測に基づいて儲けることができるし、リスクやコスト、影響や市場構造を十分に理解すれば、徹底的にテコ入れができるという考え方だ」
個人的にこういう相関関係は非常に興味がありますね。
同時に、天文学者や量子コンピューティングの専門家を雇い、さまざまな分野の科学者や数学者が結集している中で、こういう結論に至るんだなと言うのは面白いですね。
システムのシグナルは重要だが、モデルを信用しすぎない
1997年にライバルLTMCの破産すことがありますが、クオンツトレードをしているルネサンスもトレーディングモデルを信用しすぎるなというのをより強く実感するようになったそうです。
「戦略がうまくいかなくなったり、市場の変動制が急上昇したときに、システムは自動的にポジションとリスクを下げる」という方針を入れてるそうです。
ただ、それでもサブプライムショックのときの状況はかなり逼迫したようですが、乗り切って素晴らしいパフォーマンスを見せています。
同時に、モデルやシステムは大事にしていて機密漏洩を非常に気にしています。
人材の流出の問題で非常にナーバスになってるのはそれだけ宝の山なのでしょう。
ある意味アルゴリズムが重要になった現在よりも15年近く前に問題になったのは、それだけ時代の先をいってる証左かもしれません。
政治関連の話はそこまで興味を持ちませんでしたが、強烈なシステムを構築したのとその思考に関しては非常に面白く、投資本としてオススメできる一冊です。


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