「ビリオネア・インド」に書かれていたインド社会の明と暗
私は新興国株式というカテゴリの中で注目している国はいくつかあるのですが、特にインドに関しては関連する書籍を読むことが多いです。
で、わたしは新興国に関しては「シャルマの未来予測」の予想を参考にしているのですが、インド出身なだけあってインド社会の構造も詳細に書かれていました。
腐敗とか汚職というフレーズがそれなりに出てきたのですけど、それがどれほどなのかは理解していませんでした。
そんな中、腐敗とか汚職も含めた現代インド社会の状況を描いたビリオネア・インドを読みました。
著者はブレア、ブラウン両首相の戦略チームで上級政策顧問を勤めた後、フィナンシャル・タイムズのムンバイ支局長としてインドに駐在した経験があり、滞在していたインドの様子を外部から客観的にまとめられています。
読み終わるとインドもなかなか難しさを抱えているなと思えてきましたね。
金ぴか時代のあとはサフラン色したロシア?
インド滞在中に各地の様子を描いていて、その地域の超富裕層など現代インドの中心にいる人物を中心にシン政権からモディ政権への政権交代も詳細に書かれています。
で、インドの超富裕層の様子からいまのインドで何が問題かというと以下の三点に集約されるかと。
- 不平等と新たな超富裕者層
- 縁故資本主義
- 産業経済の苦境
これに宗教、カースト、地域(地域政党が強い)が絡んで多様性が進みすぎても大変なんだなと。
選挙・汚職・腐敗・世襲・巨大財閥・インフラも綿密に絡み合っていて、スポーツ分野でも八百長もあるレベルで、ルチル・シャルマが腐敗や汚職に関して多く言及していたのも頷けるなと。
政治腐敗や資本家の台頭、経済格差の拡大の状況から今のインドは南北戦争後30年間のアメリカの「金ぴか時代」ではないかとクラブツリー氏は指摘します。
ただし、アメリカは1890年代後半から30年間に革新主義時代に入り社会と政治の改革が著しく進んだ時代となりました。
一方、インドは財閥の強さや極度の汚職・腐敗などからロシアを彷彿とさせるため「サフラン色のロシア」のような状態に陥るのではないかと悲観する人もいるそうです。
東アジア式の経済成長とは中心となる産業構造も違うため、政府機構の大胆な改革が必要と本の中で説かれてますが、モディ政権も支持母体の宗教団体などいろいろとしがらみを抱えているため難易度は高そうに映りました。
ただそれでも著者はインドに対して楽観的な以下の見解を述べています。
- 世界最大の新興国市場
- 完璧に機能しているはいえないが、民主主義的な制度、裁判所や規制当局、メディアや政党が成長の基盤となりうる。
- 中国共産党の一党支配と対比して50年後もいまと同じ政治体制であり続けているのはインドの方だと考えるほうがはるかに自然。
- インドの起業家で聞いた話「留学先にインド人はインド人より頭がいいというわけではないことに気づいた。ほかの国と同じようなレベルでインド政府を機能させることができさえすれば、残りの仕事は才能豊かな国民がしっかりとやってみせれるポンテンシャルがある」
人口規模が段違い且つカーストや民族も多様化している状況でなかなか難しいとは思いますが、仮に政治面がモディ政権でできないとしてもその後の政権で改革が進んだ時に国として大きく飛躍するポテンシャルはあるとわたしも読んでいて感じました(腐敗や汚職している富豪には感じませんでしたが)。
果たしてインドは今後どこへ向かうのか?モディ後も気になるところではありますが、個人的には新興国の中でも注目したい国であることは変わりないですね。


フォローする Follow @garboflash
更新情報を受け取る
