中神康議著:「三位一体の経営」を読むと、投資家思考を持った経営者は最強であると思う
ろくすけさんのブログの記事を読んでこれは面白そうと思った「経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営」を読みました。
中神康議『三位一体の経営』を読む。 | ろくすけの長期投資の旅
みさき投資の中神さんの2冊目の著書です。『投資される経営 売買(うりかい)される経営』も大変良かったですが、さらに上を行くものを世に出していただいたという感想です。経営者と従業員がコミットし、二人三脚的に作り上げてきたこれまでの日本的経営に
日本取締役協会 独立取締役委員会委員長も勤められています。
一見、経営の本か?という印象を持ちますが、経営者・従業員・株主のトレードオフをトレードオンに昇華させる「複利の経営」を提唱していて、とくに個別株で企業を分析するときに参考になる事象が多く、投資家にもオススメできる本だと思いました。
とくに印象に残った点をまとめますと以下ですね。
経営者・従業員・株主のトレードオフをトレードオンに昇華させる「複利の経営」
経営者と従業員がコミットし、二人三脚的に作り上げてきたこれまでの日本的経営に、厳選投資家を加えた新たな経営モデルを構想し、実践することを「三位一体の経営」と定義し、それを実現するためにはどうすればいいのかが説かれています。
各章の終わりにまとめもわかりやすくて読みやすかったですね。
で、経営を徹底的に調べ上げ、鑑定し、限られた数の会社だけを厳選して長期投資する投資家の思考と技術を活用して経営していくというのはなかなか興味深いなと。
会社が利益を上げて従業員の給料を増やし、株主にも配当する。さらに従業員と経営者は所有する自社株の価値が高まることで財産も形成できるというのは、今の日本企業に必要なものですし、この30年間足らなかったことではないかと思いますね。
とくに印象に残った点をピックアップすると以下の5点ですね。
- 少ない「インプット」から多くの「アウトプット」を生み出すという「利回り」は重要だが、より重要なのはその「利回り」を持続させること。
- 資本コストを上回れない経営のままでいくら成長しても、「みなで貧しくなる」方向に突き進んでしまう。
- 経済学の教えに反する持続的な超過利潤という代物は障壁からしか生まれないが、それは競合が呆れるほどこすとを かけるか、腰を抜かすほどリスクを取ることによってしか生まれない。
- 世界各国のリスクテイクとリターンの図から、経営者の仕事のど真ん中にあるべきはずのリスクテイク、それが日本は世界で最も低いレベル。
- 株式価値を最大限高めるために、複利効果を極大化すること。そして平均回帰という恐ろしい商社の呪いにあらがうために、最適現預金水準や配当政策、自社株買いや財務レバレッジに取り組むことは経営の普遍的なテーマ。
- みさきの黄金比の理想的なプロポーション ROE(株主資本の生産性)≧ROIC(投下資本の生産性)≧ROA(資本全体の生産性)>WACC(調達した資本の平均コスト)
4つの経営タイプと障壁
「複利の経営」という単語が多く出てきますが、経営タイプの分類と障壁をどのようにして築くのかは興味深かったですね。
- 売上や利益の大小を第一とする「額」の経営
- 利益率に注目する「率」の経営
- ROE・ROA・ROICを重視する「利回り」の経営
- 長期持続的なROE・ROA・ROICを追求する「複利」の経営
このうち「複利の経営」こそ長期的に利益を創出できるのですが、そのためには障壁が必要。
4~6章で障壁造りの必要条件と十分条件の事業仮説は非常にわかりやすく、具体例も挙げていて興味深かったです。
投資家思考を持った経営者は最強である
読み終えると日本の問題点として経営者がリスクを取ってないことがよくわかります。
だからこそ投資家思考を持った経営者がいる企業こそ強いということが今後はますます傾向として強まるんじゃないかと思いました。
その意味で、役員・従業員の保有株式数を引き上げるとともに、経営を客観視できる厳選投資家を大いに活用すべきというのはその通りかと。
考えてみればバフェットやヘッジファンドは投資家であると同時に経営者であり、他企業の役員も勤めているので、みさき投資も近い思考を持ってるのかなと思いました。
経営の本ではありますが、投資をする上でのヒントが詰まった本だと思います。


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