制度的にも社会経済的にも2020年代に問題が顕在化?「2020-2030 アメリカ大分断」
コロナやアメリカ大統領選挙でアメリカの現在みたいな記事も見かけますが、今後問題が顕在化するのではないか?という懸念点はあり、やがて株価にも影響を与える可能性はあると考えています。
そんなアメリカは2020年代に「制度的」「社会経済的」にも問題が顕在化すると書いたのが「2020-2030 アメリカ大分断」です。
著者のジョージ・フリードマンは1996年に世界的インテリジェンス企業「ストラトフォー」を創設、会長を務めた人物で、ストラトフォーは「影のCIA」の異名をもつそうです。
フリードマン氏の予測として主なものは、「2020年頃に中国とロシアが崩壊分裂し、2040年頃に日米の対立が顕著となり、2050年頃に日本・トルコ同盟が米国との第3次世界大戦に突入し、2070年頃に米国とメキシコの頂上決戦が勃発する」というもので話半分のところはあります。
とはいえ専門家や専門知への経緯が損なわれていたり、大学の迎合主義に関しては非常に的を得ていますし、アメリカの国としての大局観を知る上ではいい本だと思います。
とくに印象に残ったのは2つのサイクルについてです。
80年周期の制度的サイクルと50年周期の社会経済的サイクル
国としてのサイクルというとコンドラチェフサイクルが上げられると思いますが、それについて書かれた以下の本とか読んでも、まぁ国の盛衰にサイクル的なものはあるかもしれないけど(例えば中国の王朝の交代とか)、なんだかピンとくるものがありませんでした。
それと比べて短期間でアメリカのサイクルとして上げたものはわかりやすかったですね。ただし、なぜ50年~80年周期なのかはよくわかりませんが・・
社会経済的サイクルが以下の通り。
- 1783年 独立戦争終結~ 第1サイクル
- 1828年 アンドリュー・ジャクソン大統領選出~ 第2サイクル
- 1876年 ラザフォード・ヘイズ大統領選出~ 第3サイクル
- 1929年 世界大恐慌→1932年フランクリン・フーズベルト大統領選出~ 第4サイクル
- 1980年 ロナルド・レーガン大統領選出~ 第5サイクル
制度的サイクルが以下の通り。
- 1787年 合衆国憲法制定~ 第1サイクル
- 1865年 南北戦争終結~ 第2サイクル
- 1945年 第二次世界大戦終結~ 第3サイクル
建国以来このサイクルは時期がずれていたのですが、フリードマン氏の見立てだと制度が2025年、社会経済が2030年に次のサイクルに移る時期となり、これほど2つのサイクルが近づいたことはなく、「大統領が誰であれ、今後10年にわたってこの国の空気は恐怖と嫌悪に覆われつづける」と予測しています。
ただ、その後覇権国家から転落するというわけではなく、2つのサイクルが、10年以内に衝突することで大きな変革が起き、「その後には自信と繁栄の時代が続く」との結論を導いています。
1章のアメリカの国としての成り立ちから、アメリカという国は、地球上で唯一人工的に作られた国で、国家としてのまとまりは自由という「理念」のみが唯一の拠り所。
そのため分断の圧力は内包されており、過渡期には多様な思想や社会階層間の離合集散が活性化し、国を二分するような派手なことが起こるというのは直近2回のアメリカ大統領選挙見ても明らかかと。
分断の圧力というのは南北戦争がありましたし、現状の東海岸と西海岸の都市部が民主党、それ以外が共和党というのにも表れているかと。
加えて興味深かったのは、専門知識は属人化による意思決定プロセスの不透明化により、統括者が詳細にそれらを管理できなくなり、実質的裁量が専門家各人となって細部の検証ができずに制度に矛盾や失敗が生じ、結果として信用を失うという点。
トランプが支持されるのはこれが背景にあるでしょうし、今後も根強く残るだろうなと思いました。
アメリカという国には静けさへの道を切り開くための嵐が不可欠で、アメリカ人は現在と未来にとりつかれており、過去を記憶することを不得手としているというのは覚えておきたい言葉と思いました。
次世代のテクノロジーは生物学における飛躍的な進歩にまつわるものになる
最後に次世代のテクノロジーとしてマイクロチップは世界を変えたがその成長期は終わったとのこと。
そして人口動態期の傾向からも次のサイクルで生物学における飛躍的な進歩にまつわるものが起きるとのこと。
これは的を得ていてヘルスケアセクターは重視で間違いないかなと思いました。
また、アメリカ大統領に関してはレーガンの前のカーター、ルーズベルトの前のフーバーなど、サイクルの変化の前に失敗した大統領がいました。
前のサイクルの終わりもケネディ暗殺からカーターまで暴動やベトナム戦争など不穏な時代でした。
なので今起きてることも次の時代に向けて混乱のひとつなのかもしれません。
ともあれアメリカの過去から未来を考える上でオススメできる一冊です。


フォローする Follow @garboflash
更新情報を受け取る

- 関連記事
-
- 今年も4分の1が終わったので、「2021年相場の論点」の予想を確認してみた
- 「ドラッグストア拡大史」はドラッグストアの歴史を学ぶのに最適の1冊
- 制度的にも社会経済的にも2020年代に問題が顕在化?「2020-2030 アメリカ大分断」
- アパホテル躍進の鍵はカレーにあった!?「アパ社長カレーの野望」
- ピーター・ディアマンディス著、2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ