「起業の天才」リクルート創業者江副浩正から見える日本の問題点と投資の落とし穴の怖さ
個人的に国内企業の中で注目している企業の1つしてリクルートがあります。今後も伸びるだろうなと思うと同時に、社員や元社員数名会ったときになんか通常の会社とは違う雰囲気があります。
で、リクルートというと、就職で使う前のわたしの記憶はリクルート事件よりもダイエー傘下だった印象が結構強いです。
そんなリクルート創業者江副浩正のノンフィクションが「起業の天才」です。
読んでいて引き込まれる内容で、非常に面白かったです。
著者の大西氏は文章がうまいなと思ったら、ロケット・ササキ書いた人なんですよね。
リクルート事件はライブドア事件と似ている部分もあるかと思いますが、では何故そんな会社が、危機を乗り越えて(バブルでも不動産にがっつり絡んでいた)株式時価総額で国内10位までのし上がったのか?
リクルートの内幕を読んでいるとその理由はわかりますし、江副氏の先見性や経営者としての手腕はすばらしいものがあったと伝わります。
読み終えてそんな江副氏に関して印象にこったのは、「日本の問題点」と「投資の落とし穴の怖さ」ですね。
日本的起業ではないから、1兆8000億円の借金を独力で返済し、時価総額で日本10位までのぼり詰めた
1章が生い立ちから創業、リクルートに社名変更、2章が情報誌の会社から情報サービスへの変身、3章がリクルート事件から亡くなるまでになっていて、江副氏が変わっていく様もうまく描かれていると思います。
GAFA系の創業者同様狂気がなければ、新しいことなんかできないというのがよくわかるのですが、個人からそこまでカリスマ性がないからこそ内発的にやりたいことを社員にやらせる。
この独特な日本型経営を断固拒否し、才能とモチベーションを極限まで引き出すリクルートの合理的なマネジメント手法だからこそ、バブル崩壊で多くの企業に公的資金が投じられる中、1兆8000億円の借金を独力で返済し、時価総額で日本10位までのぼり詰めたのでしょう。
ちなみに1992年頃からダイエーの支援を受けてますが、中内功はいっさい手を入れなかったのも大きいかと。
逆に典型的な大企業病に陥っていたダイエーが没落したのも必然と思えました。
それ以外もネット時代の到来を予見し、IBMのコンピュータとそれを操れるエリート人材に猛烈に投資していて先見の明もあったことが描かれています。
Amazonのジェフ・ベゾスがリクルートの買収した会社で一時期働いていたり、クラウド・コンピューティングの先駆けのような事業に着手したり、後のGoogle Mapのようなサービスの開発に随分と早くから取り組んでいたりと、一回の失敗で失脚させるのにはもったいない人物であるという印象を持ちました。
個人的に江副氏の法に反してなければなにやってもいいというのはモラルの問題はあるものの、偏った正義感から取材者との約束も守らず、報道により政治的リンチを繰り返すマスコミ全般はやはり日本にとってよろしい存在ではないこと。
また特捜検察もちょっとこれはおかしいと思えるものがあると思いました。ただ、陰謀論郷原みたいな胡散臭い反検察な人がいるから、一概に言えないんでしょうけど。
本の中で再三書かれていますが、アメリカならば世間知らずの天才起業家をエンジェル投資家と言われる経験豊富な投資家が支えるのはジェイソン・カラカニスのエンジェル投資家に書かれてるとおりだと思います。
それが江副氏にはなかったので政治や未公開株を渡すことにつながっていて、なんとかならなかったのかという印象を持ちました。
最近は少し変わって来てるとは思いますが、日本にはエンジェル投資家的な存在になれる人がまだまだ少ないでしょうね。
本当は一番やらなきゃいけない孫正義が支援をやるとかならいいんですけど、目が国外にいっちゃってますし。
リクルート事件前から投資に熱中していく描写から感じる投資の落とし穴
第二電電が創業する際や、盛岡県の安比高原の開発の経緯で、競合だったマスコミや電通だけでなく、西武や東急といった世襲の一族への反発から政治のつながりが始まったあたりから人が変わっていき、家庭内のDVなどもあったとか。
バブルに浮かれ性格が傲慢になっていった状況で、上がり続ける不動産投資にのめり込んでいく様はまさに投資の落とし穴に嵌まった感がありました。
状況的にいまの仮想通貨に通じるものはありますし、イーロン・マスクはやや近い臭いがする印象を持ちますね。
人心も離れる上に会社の規模が大きくなり敵が増えていく状況で、それを諫めるだけのメンターを持たなかったことが彼にとって不幸なことだったと何度も書かれるのはわかります。
もっと上手く立ち回れればトランプ政権誕生時にGAFAとの間を取り持ったピーター・ティールのようになれたのかもしれません。
ともあれノンフィクションの面だけでなく、日本の問題点や起業経営、投資に目が行き落とし穴に嵌まらないための反面教師など色々と今でも参考になる点は多いですし、オススメできる本です。


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