「MMTは何が間違いなのか?」を読むとそう簡単にフリーランチはないということがわかる
コロナの影響でMMT(現代貨幣理論)が話題になることも多いのですが、そもそもバイブル本の解説が「TPP デマ」で検索すると一発で出てくる某反TPP芸人がやってる時点でこらあかんという感じがして読もうという感じにはならないんですよね。
という感じでしたが、じゃあ逆に否定的な意見はどうなのかということで、「MMTは何が間違いなのか?」を読みました。
著者のジェラルド・A・エプシュタインはマサチューセッツ大学経済学部教授で、これまで、金融危機、金融規制、雇用創造と貧困削減を目的とした中央銀行制度の代替的アプローチ、資本勘定規制、中央銀行と大手金融機関の関係についての政治経済学に関する著作を多数発表してきた人です。
2010年代以降は金融システムの「社会的効率」と量的金融緩和(QE)政策が所得配分に及ぼす影響についての研究を進めているそうです。
タイトルだけ見たら否定的ですが、読み終えるとMMTを批判したものと言うよりはMMTの考慮不足や懸念点を指摘していて、緊縮財政とは違う意見で賛成だけど、もっと細部の検討が必要じゃないのかというのはもっともだなと。
MMT派から信用創造がもたらす金融不安定性への具体的な言及がない?
個人的にMMT唱える識者の研究って本当に大丈夫なの?と考えてる疑問点が具体化されていてやっぱりなと。
同時に否定ではなく、MMTの考慮不足や懸念点を指摘してるのは賛成派も耳を傾ける必要があると思うんですよね。
リーマンショックでとくに欧州の景気が冷え込んでるのに緊縮財政で余計に苦しくなった点からMMTが巻き起こした議論を評価していますし。
で、なんでMMTに関して疑問点が上がっているかというと主に以下の5点でした。
- そもそも主権通貨を発行し続けること自体が困難なはず
- 米国の金融緩和策による開発途上国への資本流入は問題を引き起こす
- 国際通貨ドル提供国である米国自身の限界
- 金融不安定性への関心の欠如
- MMT施策がもたらす既存生産力のクラウドアウト問題
ちなみに本の中では新興国にもMMTは適用できるとMMT派は言ってるそうなんですけどそれは無理だろと。
加えて基軸通貨のドルを持ってるアメリカでも厳しいという指摘はもっともだと思いました。
特に印象にこのこったのはMMT派の金融不安定性への関心欠如という点。元々、MMT派はレイの「MMT入門」では金融不安定性について真剣に考察された形跡がなく違和感があったとのこと。
結局これだけ各資産や通貨がグローバル化が進み結びついた中で、完全雇用達成を目指す極度の金融緩和と信用創造はバブルを引き起こしがち。
しかし、「MMT入門」では、拡張及び収縮を繰り返す民間信用創造と異なり、政府支出による信用創造がもたらすバランスシート膨張は維持及び制御が可能としてこれを一切問題視していないとのこと。
政府支出で創造された信用は安定すると言っても、バブルが崩壊すると貨幣流通速度も急減するはず。よって、信用収縮しないとしても「政府支出による信用創造が金融を不安定にしない」と言い切るには難しいかなと。
加えて米国金融緩和策がもたらす開発途上国へのホットマネー流入の悪影響に警鐘を鳴らしているのは、MMT抜きにしても気になる傾向かなと思いました。
ちなみにケルトンらの急進左翼的な政治主張はウォール街の富裕層に対して「MMTの主張を採用すれば高税率を避けれる」と懐柔を計っていると暴露されていました。
日本でMMT派の面子見るとそんなもんだろうなと思いますね。wikiで中野剛志、藤井聡、三橋貴明、山本太郎という肯定的な4人見たら、こりゃフリーランチなんてないというのが直感的にわかりますし。
ともあれMMTに関しては改善余地があるわけですから、MMT派も真摯に検討してよりよい制度を考えるという方向にいくのがいいのではないかと考える上でもよい本田と思います。


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