資本主義は脱物質化する?「モア・フロム・レス(MORE from LESS)」
大型連休中は本を10冊ほど読みましたが、個人的に今後の傾向として気になったのはアンドリュー・マカフィーの「MORE from LESS(モア・フロム・レス)」ですね。
MORE from LESS(モア・フロム・レス)
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アンドリュー・マカフィー/小川 敏子 日経BP 日本経済新聞出版本部 2020年09月25日頃
著者のアンドリュー・マカフィーはマサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院首席リサーチ・サイエンティストで、エコノミスト誌、ウォール・ストリート・ジャーナル紙などに寄稿するほか、世界経済フォーラム、TEDなどにも登壇している人物です。
人間が繁栄すればするほど、天然資源は枯渇し食糧生産は限界を迎えるという予想が、無批判に信じられてきたわけですが、予想と正反対のことが起きていること。
人類は経済成長と資源消費量を切り離すことに成功し、経済の脱物質化へと舵を切った。このすばらしい現象について、なぜそれが可能となったのかを解き明かし、どんな可能性を秘めているのかを記しています。
度々引用されているスティーブン・ピンカーの21世紀の啓蒙やファクトフルネスと同じ方向性の本だと思います。
「21世紀の啓蒙」は事実に基づいた希望の書 - 関東在住福岡人のまったり投資日記
ファクトフルネスに関しては以前紹介しましたが、コロナによる緊急事態宣言が出たあたりから再び経済関連のジャンルの売上で1位になることも増えています。個人的にテレビだろうがネットだろうがおかしな情報も結構あるわけですから、この本が売れるのも納得です。F...
で、その中でも印象に残ったのは資源消費量の減少傾向についてですね。
アメリカや先進国では資源の消費量が下がっている
アメリカのGDPと木材や金属資源の消費量の比較が以下の通り。


これを見ると明らかにGDPと資源消費量は切り離されてる状況で、1970年頃環境問題で騒がれていた資源が枯渇するなども克服したので、今後もより改善がみられるという啓蒙主義の意見で、そのために資本主義が重要というのが著者の意見です。
無形資産が重視される傾向もこれに合致するかなとみて思いましたね。
先進国でも同様の傾向ですが、中国やインドでは増加傾向。
とはいえ人口が多く都市化が進むことを考えれば、この2か国などは対応せざる得ず、いずれ改善するという意見はもっともだなと。
ちなみに話題の二酸化炭素排出量も頭打ちの傾向で今後は下がっていく可能性高いんじゃないでしょうか?

で、なんで脱物質化してるかというと著者はビジネス・経済・イノベーション・ちきゅに与える影響から以下の点を挙げていました。
- 常により多くを求めるが、より多くの資源は求めない
- 原料はコストがかかるので、企業は激しいコスト削減競争にしのぎを削る。
- 使用してきた原料の使用量を減らす、別の資源に置き換える、企業各社が自社の資材を効率的に活用する、使う必要がなくなる。
- イノベーションとテクノロジーの組み合わせ
例として2010年頃のレアアースの日立金属の事例が上がってますけど、これが今後進んでいくのでしょう。
それを考えると投資面から素材メーカーって面白さはあると思いますし、コモディティ関連は今後分散対象としてどうなのか?というのも思いました。
天然ガスとかは需要あるでしょうけど、それ以外は需要減少傾向でしょうし。
マカフィーが提言する7箇条
最後に著者は政策提言として以下の7箇条を上げていました。
- 公害の削減
- 温室効果ガスの削減
- 核エネルギー活用の促進
- 生息地を含めた種の保護
- 遺伝子組み換え作物を広める
- 基礎緩急への資金援助
- 市場、競争、職の創出をうながす
リベラルな考えの人物と思いますが、核エネルギーと遺伝子組み換え作物の活用は意外かもしれませんが、個人的にはソーラーも公害とかゴミの問題あるのだから、核エネルギーの研究って事故がおきたからこそできるものがあると考えます。
なので、著者の意見はもっともと思いますし、遺伝子組み換え作物に関しても成分研究とかもデータが蓄積されてくわけですから、研究は進めておいて問題ないと考えます。
分断にも言及していて、現在の世界的な問題とそれを克服できるというポジティブな論調も個人的によかったと思いますし、ファクトフルネスや21世紀の啓蒙を読んだ人はこの本を読んでおいて損はないと思います。
MORE from LESS(モア・フロム・レス)
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アンドリュー・マカフィー/小川 敏子 日経BP 日本経済新聞出版本部 2020年09月25日頃


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