ソニー元ナンバー2が語るイメージセンサー躍進の内実とは?「ソニー半導体の奇跡」
スマートフォンカメラなどに搭載されるイメージセンサーのシェアナンバーワンはソニーで、収益面をがっちりと支えています。
しかしこの事業はソニー社内では「問題事業本部」「負け組」「お荷物集団」と言われ、事業所の中心も都心から離れた神奈川県厚木市にあり、会社のトップはひそかに事業売却を検討していたこともあったそうです。
そんな事業が躍進するまでの仮定を描いた「ソニー半導体の奇跡」を読みました。
著者の斎藤端氏は2012年から2015年の退社まで執行役EVP・CSOまで上り詰めた人物で、半導体事事業グループ副本部長や業務執行役員EVP半導体事業本部長を歴任した人物です。
そんな齋藤氏が半導体事業の製品開発や人間模様を含めて語られていて、最終的に苦難を乗り越えて成功まで至る過程は読んでいて惹きつけられるものがありました。
同時にソニーはおかしくなったという報道が流れる中でもここまで立ち直れたのは、ソニーだからこそというのもわかる内容だと思いましたね。
ソニーがイメージセンサーのシェアナンバーワンになれたのは必然である。
CCDイメージセンサーの圧倒的勝者が、「イノベーターのジレンマ」に陥らず、次世代のCMOSイメージセンサーで如何に大躍進を実現したかが、その背景とともに語られています。
著者から見たリアルな周りの心情まで描写されていて、外から見えない強烈な個性同時のぶつかり合い、駆け引きの中で運や偶然にも左右されながら今のソニーが形作られていることがよくわかります。
センサーに関しても幸運や偶然ではなく、その事業に関わる人間の意欲と能力を引き出す組織マネジメントに真奥の一原因があったのだと納得させられるものがありました。
また、同時に本の中で創業者の言葉が多数出てくるわけですが、経営層がこれだけ創業者の考えを行動に移せてるからこそ強みがあるのだろうなと(もちろん創業者の存命時に実際に話を聞いたりしているのもありますが)
半導体とプレステやカメラなど身近な製品開発と共に人間模様が語られているので、なぜプレステの供給が危ぶまれてたのかもよくわかりました。
個々人の活躍がポジティブに語られているのは、著者が総合企画室や経営戦略の部門から半導体を何も知らない状況で半導体の部門に移ってきて危機を乗り越えて逆襲したからこそもあると思いました。
もちろん他の部門から移ってきたからこそ事業売却などもうまく立ち回って生き残りに貢献したというのもあるでしょう。
ちなみに本の中で一番印象に残ったのは言葉は「前任者の不始末もすべて現担当の責任だ。すべてを背負って責任持って立ち向かう気概がないといけない。」わたしは同じような状況に陥ってうまくやれるとは思えません。
個人的にわたしの会社にはない以下の部分はなかなか守れるものではないかなという気がしました。
- カメラ事業やってるのに他のカメラ競合と交渉
- 本部長レベルが上の方針とは逆の動きをやっている
- チャレンジはつぶしもせず、開発に寛容であった
若干時系列とかが飛んでしまうのが難点ではありますが、読み終わって爽快感のある一冊だと思います。


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