ハワード・マークスがまえがきで褒めている「株式投資完全入門」
私が好きな投資家の一人としてハワード・マークスを上げることが多く、「市場サイクルを極める」はほんといい本だと思いますし、昨年日経でインタビュー記事と動画が載っていたのはうれしかったです。
投資で利益が出ているときこそ長期投資家にとっては必読の書。市場サイクルを極めるを読んで - 関東在住福岡人のまったり投資日記
投資を続けてきて幸運にも上昇相場に乗ることができましたが、リーマンショックを経験していないので、本当の下げ相場がいかほどのものか?と考える人は20代30代で結構いるんじゃないかと思うんですね。長期投資を目指す上で、いかに大きな調整を耐えうるかというのは一つの大きな課題だと個人的にも考えます。長期投資を考えてる人の中で、暴落に対する心構えを理解するのに良い本として奨められてるのを見かけるのが、オークツリ...
ジョシュア・パールとジョシュア・ロゼンバウムはそれぞれ別のファンドのマネジングディレクターを務めていて、専門は前者がファンダメンタルズ、後者がM&Aやコートレートファイナンスが専門のようです。
そんな2人の知識に基づいてプロの投資家がどのように意思決定をしているのかが克明にわかるよう、丁寧にステップバイステップで説明したのが本書です。
個人的に印象に残った点をまとめると以下の2点でしょうか。
個別銘柄投資に至るまでの5つのステップ
本は5章にわたって、個別銘柄投資に至るまでの以下の5つのステップを章毎に説明しています。
- アイデアを創出する
- 最良のアイデアを見出す
- 事業と財務のデューデリジェンス
- バリュエーションとカタリスト
- 投資判断とポートフォリオ管理
ネックとしては説明がデルファイ(DLPH)限定になってることでしょうか?
ただ、スピンオフとか他国や同業種、取引先の影響度合いまで見ているので説明しやすいから絞っているめんもあるでしょうけど。
とくに紹介されている「投資メモのテンプレート」が素晴らしく、指標面からの評価に加えて、経営陣、成長性、企業概要、リスクなどの各項目を記入していくことで、かなりクリアに会社を評価できるようになると思います。
ここまで分析しているのかと思わせるものがありますし、すくなくともわたしの観測範囲でここまでわかりやすくデータをまとめて分析している人は思い当たらないですね。
特に印象の残ったポートフォリオ管理
個人的に5章の中で一番印象に残ったのは「投資判断とポートフォリオ管理」ですね。
とくにポートフォリオ構築に関する以下の記載はいいなと思いました。
- 投資目的をベンチマークに勝つなのか、年率2桁のリターンを達成するのか、リスク調整後の絶対リターンなのか、インカムの創出なのか、時間軸を反映して定める必要がある。
- 投資目的と関連するリスク許容度を考えた賢明なポートフォリオを構築するには、当該ポジションのボラティリティやベータを考える必要がある。
- ポジションの規模は集中投資だろうが分散投資だろうが、それぞれのポジションが持つ効果を他のそれと比較してポジションの規模を考えるべきである。ポジションの規模を間違えたらポートフォリオを危険にさらすリスクを負うことになる。
- セクターと地域に関しては集中したポジションとポートフォリオ内の他のポジションとの相関関係にも注意が必要である。
- 特定の投資テーマが人気になると、大衆を引き付ける傾向にある。ファストマネーは行くのも来るのもあっという間なので、当初それらの銘柄への投資が有効であっても環境の悪化に極めて脆弱となる。自身のない投資家たちが出口に殺到するのだ。
という感じでセクターや地域に関してもかなり分散していて以下のような感じでした。

ちなみにパフォーマンスはというと、リーマンショック後でS&P500を圧倒していました。

ルールに基づいた徹底した分析に基づいた銘柄選択でここまでやれるからこそ、ハワード・マークスもまえがきで称賛しているんでしょうね。
ともあれ銘柄の発掘から分析のプロセスを知るうえでオススメできる一冊だと思います。


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