富を得る方法は、すべての卵をひとつの籠につめて見守ること?「カーネギー自伝」
出張で読める小さめの本はないかと探していたところ、「カーネギー自伝」が気になったんので飛行機の移動中に読み終えました。
タイトル通り1800年代後半に鉄鋼王と呼ばれたアンドリュー・カーネギーの自伝で、亡くなる5年前の第一次世界大戦の開始に失望して書かなくなるまでの内容が網羅されています。
スコットランドの貧しい織物職人からアメリカに移民し、その後のしあがった典型的なアメリカン・ヒーローなのですが、カーネギーが賞賛されるのは、実業界から退き、「富は神より委託されたもの」との信念に基づいて、教育施設や平和機関の設立など福祉事業にもてる資産を投じ、慈善事業家として第二の人生を送ったことがあげられます。
現代の富豪であるビル・ゲイツやバフェットが慈善活動に積極的に取り組む源流といっていいでしょうし、労働者への還元もあの時代にしては相当配慮している経営者でESGあたりの考えにも通じるところはあるでしょう。
個人的にお金の使い方に関してとくに印象に残りました。
富は神より委託されたもの
カーネギーは成功しつつあった33歳くらいの頃に「蓄財は偶像崇拝の悪い種の一つだ。金銭崇拝ほど品位を低下させる偶像はない」と書き残していて、35歳で引退してその後は慈善活動を行うと記してたのですが、実際に慈善事業を始めるのは40代半ばになって、完全引退も66歳までになりました。
ただ、その後の慈善活動は素晴らしいものがあり、博物館や図書館建設を進めています。
カーネギーが成り上がった時代は金ぴか時代と呼ばれて、南北戦争後の数十年で拝金主義に染まった成金趣味の時代として扱われることもありますが、ロックフェラーなどと違って評価されている理由もよくわかります。
実際、渋沢栄一も尊敬していて翻訳などを亡くなった後夫人に要望した様子ですし。
個人的に以下のお金に関する言葉は素晴らしいなと。
- 蓄財は偶像崇拝の悪い種の一つだ。金銭崇拝ほど品位を低下させる偶像はない。
- 裕福な人はその富を浪費するよりも、社会がより豊かになるために使うべきだ。
- どんな失敗もその失敗自体の中に、相応の利益への種子を含んでいる。
- 富を得る方法は、すべての卵をひとつの籠につめて見守ることだ。
- 金が貴いのは、それを正しく得ることが難しいからである。さらに正しく得たものを正しく使うことが難しいからである。
- お金をただ与えるだけでは人を堕落させる。努力している人に援助することが本当の慈善である。
とくに卵をひとつの加護に詰める話は鉄道や電信の仕事をしつつも結局鉄鋼に絞っていく過程を読めばなるほどなと思いますし、1つのことを極めて一人者になり成功したからこその発言かなと思いますね。
ある意味仕事に関しては楽天的であれなど結構シンプルなことが多いんでしょうね。
あとはやはりどう使うかということを意識していて、仮にセミリタイアやらFIREしたとしても世のために役立つことに使うという精神は忘れないようにしたいものです。
FIRE本やセミリタイア本に足りないのはアメリカンドリーム?
個人的にこういう自伝を読んでおりますと洋書和書問わず流行りのFIRE本とか陳腐に思えてきます。
で、個人的にカーネギーのように貧しいところから成り上がって40歳でFIREして慈善活動に勤しむという人が今後FIRE関連の覇権を握るのかもしれないなと思いました。
そりゃ親から20歳にもなってないのに株を相続してそれを元手にFIREしたとか面白くないでしょうし。
ただ、経歴盛っちゃってる人とかもでてくるかもしれません。
まぁ、宝島とかが関連本出しまくってる状況だから内容が粗雑なのは仕方ないのかもしれませんがw


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