「期待リターン」はファクター投資を研究結果をまとめた一冊
個人的に年に3~5回はお高めの投資本を買って読むようにしています。
割と投資関係者向けの本も多いですが、投資に使える指標とか考えは参考になると考えています。
企業の本質的価値算出の解説本「パーフェクト証券分析」に載っていたリスクの評価方法 - 関東在住福岡人のまったり投資日記
8月に夏休み期間中にたまっていた投資関連本を読みましたが、好調な相場だからこそ崩れたときにいかに被害を最小限に止めるかというのを含めていろいろと読みました。とくに個別銘柄からどうやってポートフォリオを作るかとかに関しては、ハワード・マークスがまえがきで褒めてる「株式投資完全入門」は良かったと思います。...
著者のアンティ・イルマネン氏は、グローバル資産運用会社AQRキャピタルマネジメントのプリンシパルであり、ポートフォリオソリューショングループのグローバル共同責任者です。
この本は2011年刊行の原書“Expected Returns: An Invest- or's Guide to Harvesting Market Rewards"(Wil- ey)からリスクプレミアムに関する章を抜粋し、原著者みずからの手で序論を追加し、本文の一部改訂を施しています。
序論など改定が行われていますし、データがやや古いものもありますが、考えや傾向に関しては興味深い内容が多かったです。
個人的によかったと思う章を抜粋すると以下の通りでしょうか?
期待リターンの源泉たるリスクプレミアム
本の構成としては第1部の1章から2章が導入部分で、序論に加えてヒストリカル・リターンや学術的理論を一通り触れています。
データは他から引用している部分も多く、ジェレミー・シーゲル大先生のデータも結構引用されてました。
そして肝となるのが第2部の3章からで、期待リターンの源泉たるリスクプレミアムを資産クラス(株式、国債、クレジット、オルタナティブ)、戦略スタイル(バリュー、キャリー、トレンド(モメンタム)、ボラティリティ)、リスクファクター(成長性、インフレ、非流動性、テールリスク)という様々な周辺テーマも含めて幅広く議論しています。
これらの12項目に関してイルマネン氏はキューブ的に立方体の図を掲載しているのが印象に残りました。
結局どの面からみるかによって立方体の見え方は異なるかもしれませんけど、1つよりは2つ、2つよりは3つの面から見る方がいいというのを示唆しているかなと思いました。
ファクター関連のETFが2010年代中頃からぼちぼち出始めて、スマートベータとしてもてはやされていましたが、盛り上がる前にこの本をまとめてファクターに関して体系的にまとめてるので貴重な本だと思います。
ちなみに9章「コモディティ・モメンタムとトレンド投資」なんかはコモディティだけかよとタイトルだけ見たら思いますが、きっちりモメンタムと株式の部分もカバーしてくれていて満足でした。
やっぱりバリューとモメンタムの組み合わせなんだというのも改めて実感しました。
ただ、2011年本が元になってるのでデータがその後10年でどうなったかは気になりました。
通貨キャリーの高利回り通貨を購入して低利回り通貨を売却する戦略やG10市場におけるキャリー戦略のシャープレシオは魅力的というのが継続しているかは知りたいなと思ったんですけどね。
とはいえファクター投資の根幹となる部分が解説されていて非常に興味深い本でした。


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