中国がはまった大国は小国に勝てない戦略のパラドックスとは?「ラストエンペラー習近平」
わたしは中国史関連の本は定期的に読みますし、中国断固制裁とはいかないまでも中国に関してはつかず離れ過ぎずくらいのスタンスがいいのでは?と考えてます。
ただ、米国外株の比率を上げてる状況ですけど、さすがにちょっとバブルってないかということで、「バブルの経済理論」とかバブル関連の本は読んでます。
「バブルの経済理論」に書かれてあった中国のバブルに関する考察 - 関東在住福岡人のまったり投資日記
先週紹介した「バブルの経済理論」はバブルの歴史から、低金利が続く状況下の様子などを8年かけて書いただけあってなかなかの大作でした。...
著者のエドワード・ルトワックはホワイトハウスの国家安全保障委員を務める人物ですので、当然中国に対する日本の対応に関して論じてる部分はアメリカの言い分というものが強いです。
ただし、それを抜きにしても2021年の中国の動向を見ると「習近平は、完全に全方位敵対路線に入った」というのは一理あるかなと。
チャイナ1.0からチャイナ4.0に至る戦略過程
奥山真司氏がルトワック氏に対して行ったインタビュー等をまとめたもので、アメリカ側の視点で米中対立を読み解いたものであるが、日本の外交・防衛に関しても数多く言及しています。
中国は21世紀に入って以降4つの戦略の変化があったとルトワック氏は説きますが、確かにこれはあるなという印象です。
- チャイナ1.0・・・平和的な経済的台頭を目指し、WTOへの加盟や、国際法を遵守する姿勢を示し、実際経済的な発展を実現した。
- チャイナ2.0・・・リーマンショックが起きると、中国は欧米の弱体化を予測し、対外強硬路線に変化した。古文書や古地図を“発見”しては領土や領海でこれまでの国際的な取り決めを覆すような強硬な主張を開始→反中国ネットワークが形成され始め、思うように進まなかった。
- チャイナ3.0・・・2014年秋頃から「相手を選んで攻撃する」という方針に切り替えた。日本やインドに対しては公に非難するようなことは控え、他方でフィリピンなどの抵抗できない国には強硬路線を続けた。そしてアメリカとは「新型大国関係」を唱え米中の「G2」で国際秩序を形成することを提案し、両大国による世界統治を目指した→アメリカが拒否
- チャイナ4.0・・・コロナ禍を期に中国はパンデミックへの対応に失敗した各国が弱体化したと見なして、スウェーデン、インド、ベトナム、オーストラリア等と諍いを起こし始めた「全方位強硬路線」
で、現状はチャイナ4.0で反中同盟が形成中とあります。
個人的にロシアに関しては中国の見方ではないということですが、結果的に中国と組む可能性は結構あるのと、習近平はプーチンを参考にしている面があるのでやや見解の根拠が弱いかなと思いました。
結局この反中同盟の観点から日本は台湾有事の際に「中立の姿勢を崩すことなく、台湾を守るための努力に参加しなければならない」ということになるわけで、これはほんとその通り。
日本の参考になるのは過去のフィンランドとその隣国のスウェーデンの関係で、いざとなったときフィンランドに大量供給するために対戦車砲を配備することや、空軍力の過剰とも言えるほどの強化したとのことで、これは日本で今後議論が深まるなと思いました。
同時に福岡の人間として半導体関連の工場の九州誘致は非常にいいですし、人材育成の観点からもやるべきことだと考えます。
習近平の皇帝化と大国は小国に勝てない
習近平に関してルトワック氏は以下の点から皇帝化しているといっています。
- 習近平は2012年に党総書記に就任してから5年間で汚職一掃を名目として153万7000人もの幹部を追放し、反対勢力を一掃した。
- 2017年には「新時代の中国の特色ある社会主義思想」、いわゆる「習近平思想」、を打ち出し以後記者や学生に教育を義務付けている。2018年3月にはそれまで憲法で2期10年と定められていた国家主席の任期の限度を撤廃し、着々と終身国家主席の地位を維持するための環境を固めている。
これに香港や大企業に関して締め付けが強まったのが2021年でしたから、見立てはあまり間違ってないと思います。
とはいえ戦略的に強い国は周りと同盟を結べばいいが、結ばないと小国同士が他と結びついて「大国は小国に勝てない」というのは、ナポレオン戦争時のスウェーデンの動きを例に紹介されてるのはなるほどなと思いました。
2020年代に東アジアは2010年代と違って大きな動きがありそうな時代になりそうですから、日本もそれに関係する可能性大と投資をするうえでも考えておかないといけないでしょう。


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