「エンベデッド・ファイナンスの衝撃」に書かれてあったアップルカー日本上陸の現実性
フィンテックという言葉は一般に浸透したかと思いますが、さらにその発展系という意味で「エンベッデッド・ファイナンス」という単語があります。
「エンベッデッド・ファイナンス」に関しての定義は金融以外のサービス提供企業(非金融企業)が、既存サービスに金融サービスを組み込んで金融サービスを提供するになります。
そんなエンベッデッド・ファイナンスの定義、背景などの基本から、国内外の具体的なサービスの紹介、AFA の取り組み、金融/非金融企業それぞれが考えなければならない対応策など、さまざまな観点から世界的に大きな盛り上がりを見せているエンベッデッド・ファイナンスの世界を詳細にレポートしたのが、「エンベデッド・ファイナンスの衝撃」です。
すべての企業は金融サービス企業になるというフレーズが気になって読んでみました。
著者の城田真琴氏は野村総合研究所 IT基盤技術戦略室室長/上席研究員で、一貫して先端 IT が企業・社会に与えるインパクトを調査・研究している人で、総務省や経済産業省のWGの委員なども行っている人物です。
国内に関してはある程度わかる内容でしたが、個人的には国外企業の動きは気になりました。
とくに印象に残ったのは「Apple Card」に関してですね。
アップルカードの寝の狙いは決済エコシステムの構築
アップルカードは2019年8月にゴールドマンサックスを発行会社としてアメリカで発行が開始されたクレジットカードで、アップル自身は「クレジットカードを完全に再定義した」と豪語しているとか。
アップルカードは高級感のあるチタン製の物理カードも発行しているようですが、基本的にはアップルペイと紐付けで利用するバーチャルカードになります。
特徴をまとめると以下の通り。
- 申し込みはiPhoneのウォレットアプリから行うことができて、大半はアップルIDから紐付いていて、申し込みから利用開始まで数分で完了する。
- カスタマーサポートも24時間受け付けている。
- 利用者名やロゴ以外の情報は全て内部のICチップに保持されていて、有効期限などの情報は存在しないため、スキミングなどの被害に遭う可能性はほぼゼロ。
- セキュリティをこれまでにないレベルで引き上げて、利用を促進していくことを目的にしている。
- 年会費、海外決済手数料、延滞手数料、限度額超過手数料等は一切発生しない。
- キャッシュバックはアップルペイと紐付けたアップルカードを使った通常の買い物では2%、ナイキやウーバーイーツ、エクソンモービル、ウォルグリーンなどの特定の店での使用は3%。アップル関連も3%
- 2021年3月には新規ユーザー対象にキャッシュバック率を6%にした。
- アップルの狙いは決済エコシステムの構築で、アップルカードの発行によって、やや伸び悩んでいたアップルペイの利用を促進して、アップル/キャッシュの利用の拡大やアップル製品の販促も狙っている。
とくに還元率がいいのと、有効期限なども気にしないという意味で結構いいなと読んでいて思いましたね。
キャッシュバックが3%になる例を見ていると日本でも使えないかと思います。
日本はiPhoneが強いですし。
で、城田氏のアップルカードの日本上陸に関しての見解は以下の通り。
- 2019年7月に「Apple Card」と「Apple Cash」の商標登録の出願を行っている。
- アップルカードをアメリカで共同発行しているゴールドマンサックスが2021年7月に日本で銀行免許を取得している。
- ただし、アップルカードの利用で発生するデイリーキャッシュはアップルキャッシュに入金されるが、アメリカではグリーンドットバンクに専用口座を開設することによって実現しているので、日本でも銀行との連携によってアップルキャッシュの仕組みを構築するのが先。
- 日本とアメリカでは、日本は加盟店からの決済手数料や消費者からの年会費が主な収入源だが、アメリカはリボ払いの弁済金に含まれる手数料が収入源なので、キャッシュバック率を柔軟にアップさせるような運用ができない可能性がある。
- アメリカのアップルカード事業のスキームを日本にそのまま持ち込むのはハードルが高く、アメリカ以外で展開していないのはこうした理由があるからと推測され、もうしばらく時間がかかるだろう。
現実的には欧州の先進国で開始となれば日本も可能性が高まりますが、もう少し時間がかかりそうな印象を持ちました。
ただ、セキュリティに関しては割と実績を積んできてますから、仮に上陸となればかなりのインパクトはあるでしょうね。
アップルカード以外でも以下の内容は興味深かったですね。
- アメリカではキャッシュレス店舗禁止法が進んでいる。
- グーグルによるスーパーアプリの可能性
- 中国のスーパーアプリ解体も
- グーグルPlexの開発断念
今後の潮流を知る上でも読む価値のある一冊だと思います。


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