リスクはリターンよりも予測しやすい?セバスチャン・ペイジ「分散投資を超えて」
有名な投資関連本は読みつくした感じですので、数か月に1回くらいに当たりの投資関連本引くなというレベルになってきました。
ですので、以前ほどAmazonで買う機会も減ってきたのですけど、今年の1月くらいにオススメで表示された「分散投資を超えて」は面白そうなのでポチって、ようやく仕事が落ち着いたゴールデンウィーク中に読みました。
著者のセバスチャン・ペイジは以前紹介したT・ロウ・プライスのグローバルマルチアセット部門のチームを統括している人物で、その前はステートストリートやPIMCOに勤務していて書いている内容は株式から債券、プライベートエクイティと多岐にわたっています。
成長株投資の先駆者の投資哲学とは?T・ロウ・プライスを読んで - 関東在住福岡人のまったり投資日記
わたしは割とデータを好んで使いますし、データをいかに有効活用するかを競う状況になってるメジャーリーグなんかは非常に興味を持ってます。それは投資にも通じていて、投資のデータを色々と調べるのも好きなのですが、わたしが一番気になってるのは1970年代のデータ。金本位制→変動為替相場制の転換点ですし、石油ショックでインフレが進んだ期間で、債券価格も下がっていました。...
リスクはリターンよりも予測しやすい?
セバスチャン・ペイジ氏は、グローバルマルチアセット部門のチームを統括している間に、リターン分析やリスク分析などの論文をかなり出してる人物のようです。
そんなペイジ氏がリターン予測、リスク予測、ポートフォリオ構築に関する見解は以下の通り。
- 欠点はあるもののCAPM(資本資産価格モデル)は多くの投資家が考えているよりも役に立つ。CAPMは期待リターンを客観的なリスク測度と現在の金利水準にリンクさせるからである。
- 債券市場では満期利回りは将来リターンほど良い予測であり、多くの人が考えているよりも有効である。
- 先行研究とわたし自身の経験から、モメンタムは特にバリュエーションやそのほかのシグナルと組み合わせた場合に、アセットアロケーションにおいてリターンを予測するための有用な構成要素であると考えている。
- リターンの長期予測はシンプルな方がいい。株式は予想値がP/Eレシオの逆数+インフレ率から大きく離れていないこと、債券の場合は予想値がその資産クラスの満期利回りから大きく離れていないこと。
- 金利の上昇が、株式やクレジットなどのリスク資産にとって悪いことだとやみくもに決めつけてはいけない。ファンダメンタルが極端な水準に達している場合、平均回帰の可能性を想定する。
- リターンモデルよりも決定的なので、リスクはリターンよりも予測しやすい。
- 1か月から1年先までの短期的なボラティリティは単純なモデルであってもかなり予測可能である。
- 債券は株式が急落するときには株式との分散効果があるが、株式は債券が急落するときに債券との分散効果がないことがわかった。
- ボラティリティの持続性が最も高いのは、より短い期間であるという点を考慮する。
- 投資家はリスクモデルにファクターアプローチを使用し、ファクターベースのリスク予測を資産クラスレベルに集約するのがよい。
- プライベート・エクイティはフリーランチではない。
- ポートフォリオの流動性をある程度妥協できる適格投資家にとっては、すべてを考慮したうえで、オルタナティブ投資への10%の配分は合理的であると思われる。
- ETFの取引高が急増すると、構成銘柄間の相関が企業レベルのファンダメンタルでは正当化できないレベルまで上昇することがわかった。
式とかの詳細は本に書かれてる部分を割愛してますけど、リターン分析やリスク分析の式も割とシンプルでわかりやすかったですね。
プライベート・エクイティがなぜあんなにパフォーマンスがいいのか不思議でしたが、その点に関する指摘も興味深かったです。
あとポートフォリオを変えるか変えないかの判断を大手資産運用会社はこうやってるんだという実例も読めて貴重。
米国一辺倒ではなくグローバルマルチアセットの運用を行ってるので、米国外のデータも載っていて個人的には好印象でした。
ファクター投資に関しても記載がありましたが、本の中で名前も出てた「期待リターン」はデータが古かっただけに、それを補う意味でもよかったです。
「期待リターン」はファクター投資を研究結果をまとめた一冊 - 関東在住福岡人のまったり投資日記
個人的に年に3~5回はお高めの投資本を買って読むようにしています。割と投資関係者向けの本も多いですが、投資に使える指標とか考えは参考になると考えています。...
リタイアからの前後の20年で比率を変化させるものでしたが、なかなか興味深い内容。
金利が転換点を迎えてる中で参考になる面は多そうですから、個人的にPortfolio Visualizerあたりで検証してみようと考えています。
ともあれリスクやリターンを考える上で有意義な一冊でした。


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