どこで間違えたかは答えがわかれるが、日本企業に勤めるなら読んでおいた方がいい「GE帝国盛衰史」
5年くらい前はブログ村の米国株カテゴリを見ていて、その中で文才を感じさせるブログの1つとして「GEとともに生きる」がありました。
結局減配やらいろいろあって株価も回復できてない状況なのですが、当時GEに投資をしていなかった身としては(投資しているHDVには一時的に組み入れられてたが)、どういう経緯だったのかはよく理解してませんでした。
その後、米国株村はネカマやらまともなブログ数の減少で見なくなって久しいのですが、「GE帝国盛衰史」という興味深い本を偶然見つけてAmazonでポチリました。
トーマス・グリタとテッド・マンの両名はウォール・ストリート・ジャーナルのニューヨーク支局・ワシントンDC支局の記者です。
内容は「選択と集中」で経営の神様と呼ばれたジャック・ウェルチの下からの綿密な取材に基づき、ウェルチのあとのCEOを引き継いだ、ジェフ・イメルト時代の経営を中心に、同社の苦闘の内幕が書かれています。
読み終わった後、これはアメリカだけでなく日本企業など他国の企業にも通じますし、ビル・ゲイツが「2021年夏の推薦図書5冊」に選んだのもよくわかる内容でした。
どこで間違えたかは答えがわかれる
Amazonのレビュー見ても☆5つになりのは非常によくわかるのですが、ではどこで間違えたかというと、答えが分かれると思います。
ざっくり読んでいて問題だと思うところを列挙しても少なくとも以下の項目があるかと思います。
- 製造・エネルギー・金融・保険・メディアまで広がったコングロマリット経営
- 企業買収におけるターゲットの推定やら交渉過程が甘い
- 利益をねん出するための会計処理
- 権力が1人に集中するガバナンス
- 取締役会や監査も機能していない
- 異論を許さない空気
- 隠ぺい体質
- 人材制度システム
- 無理にIT化・DX化を進める
- 過剰なマーケティング広告
行き過ぎたグローバル経済・金融資本主義・株主至上主義・成果主義といった問題もあるとえいえばあるのですが、それだけではないところにも問題が潜んでいて、複合的に問題同士が絡み合ってカオスというしかありません。
日本企業でも当てはまるところはあるのでしょうが、ここまで酷くなるかというとう~んという感じがします。
東芝や東電は近いかもしれませんが、それでもここまで酷くなるか?という感じです。
ちなみに訳者あとがきにかかれてることが非常に印象に残っていて、
とくに個別株に投資をする人は肝に銘じておきたい話かと。投資家もGEウォッチャーもGEがどこで利益を上げているのか、なぜこれほど安定的に配当を継続できるのかがわからなかった。だが、文句のつけようのない配当を目の前にして、結局「GEだから」という理由でだれもが納得した。多臓器不全に陥っていたGEの内情を見抜けなかった理由がそこにあると筆者は指摘する。
ただ、この本が素晴らしいのは、社内の研修とかであるトラブルケーススタディではなく、キャリアとか人となりなど人間が描かれていて、エゴのぶつかり合いとかもありながらも、だれかを悪者にしてない点が好感持てるのもあると思いました。
成果主義というのは日本の企業でもあるのですが、余りに追い込み過ぎると人は隠ぺいやら集団で謎な会計処理を行うという意味で、日本型雇用制度のいいところは多少保全しておいて方がいいんじゃないかと思う例でもあります。
日系企業だろうが、ベンチャーだろうが、外資系企業だろうが、企業に勤める人は読んでおいて損はない一冊だと考えます。


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