21世紀人類の半分はアフリカ人になる?「人口革命 アフリカ化する人類」
タイトルが気になって、「人口革命 アフリカ化する人類」を読みました。
個人的には「超加速経済アフリカ」とか読んでいて、これから人口の増え続けるアフリカには興味があるんですよね。
著者の平野克己氏は日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所上席主任調査研究員で、アフリカに関する著作も複数ある人物です。
人口が増加するというだけで、アフリカ市場の可能性を訴える本が多い中、学術的な根拠に基づいた本ですが、アフリカ各国を学術論文的に書かれてるので、興味深い事象も結構ありました。
アフリカに人口ボーナスは働かない
人口に関する研究で、欧米やアジアと人口増加の構造が異なりアフリカは経済開発が進まない中、なぜ人口が増えるのかという点に関して幅広く言及されています。
個人的に印象に残った点をまとめると以下ですね。
- 日中韓の合計特殊出生率(TFR)を比較すると、韓国と中国はTFRが6を超えてた時期があったため高度成長期も長かった。
- 上記の反動があり中国や韓国も人口オーナスから逃れることはできない。人口減少に向かう人口革命第2の局面においては、東アジア経済は総じて不利な条件を抱える。
- 移民もかならず年を取るため、生産年齢人口比を永久に高く維持しておくことはできない。
- アフリカは出生率の低下が緩慢で膨大な扶養人口を抱えており、経済成長にとっては不利な年齢構成になっている。
- アフリカの政府は財政力が弱く、行政機構が脆弱で他地域に比べて経済社会に占める国家の比重が高い。
- エチオピアは食糧自給率100%を達成し、政権が支援したため経済成長でも農業の割合が非常に高かったが、輸出製造業の育成に失敗し、この間内戦も起きた。
- アフリカでは政府より巨大で強力な企業が登場しうる。
- アフリカでは1人あたりのGDPや都市化率ではなく食料生産性の向上がアフリカにおける人口転換の始点になる。耕地拡大と人口増加のリンケージが解けて生活様式が変容したときに、出世率低下のトレンドがアフリカにも定着する。
- 国連の人口予測は推計が多くアフリカに関しては推測が難しい。先進国でも予測は20年先を適切に予測できていない。
- アフリカ経済が資源ブームのなかで成長できたのは各国政府の政策ではなく企業活動が活発化したからで、アフリカにおける中国の今後の展開にとって中国政府の企業統制政策はマイナスに働くだろう。
人口に関しては先進国や東アジアを例にアフリカの例との違いを説明していて興味深かったです。
そしてちまたで先進国の人口減少論が語られてますが、それが当たってるのかアフリカをみてると間違ってる可能性があるという指摘は読んでいてその通りかと思いました。
で、国連の人口予測は先進国でも20年先を適切に予測できてない状況下で、推計の要素が多いアフリカで当てることは難しそう。
また、食料自給率の問題がある場所に、1950年時点では世界総人口の1割にも満たなかった場所に人口増加率が1950年代から2%を割りこんだことがない状況というのは、東アジアの新興国のモデルを当てはめるのも難しそうな印象でした。
あと、エチオピアは食糧自給率100%を達成したものの、経済成長で農業の比率が高く、やがて産業育成に失敗し、多民族国家で内戦起きるという状況で、やはり産業興して東アジア型で発展というのも現状では難しいんでしょうね。
投資観点でいうと「アフリカでは政府より巨大で強力な企業が登場しうる。」というのは覚えておいて損はないかなと読んでいて感じました。
ともあれアフリカの可能性という意味ではなく、取得可能な情報からのリアルな分析と状況を書いていて、価値のある一冊だと思います。


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