世界最大級銀行の発足のはずが・・「みずほ、迷走の20年」
現役・OBのみずほ関係者のインタビューから、みずほ20年の軌跡をまとめていて、企業風土や組織の問題を新聞記者の目線で取り上げてる一冊でもあります。
6章で開陳される著者の金融再生プランは浅い感じで、なんで日銀人事と金融緩和止めろの記事が日経に載ってるのかがよくわかる一冊でもありました。
個人的に読み終えた後に思うのは、GE帝国盛衰史に通じるものもあるなと。
統合したものの間の悪いことが頻発する
1章と2章は2021年に起きた大規模なシステム障害とトップの総退陣の顛末、3章は統合によるみずほ銀行の誕生、4章東日本大震災時のシステム障害と反社融資問題で、5章が現社長就任後という内容です。
3行が生き残りのために統合したものの、小泉政権と竹中プランや金融庁の思惑によって不良債権処理に追われてシステムが整備できずじまい。
統合という組織的な課題を内在してシステム障害を起こして、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」まで言われる始末。
ただ、じゃあどこで回避できたかというとう~んとなるところに迷走というタイトルになるのかなと読んでいて思いました。
これはGE帝国盛衰史と同じ印象を持ちました。
著者が指摘するように、統合当初は世界最大級銀行の発足というビッグニュースだったのに、目指すべきメガサイズの商業銀行の構想を持たないまま走り続けたというのはその通り。
ただ、合併した直後に不良債権処理に追われた間の悪さで、システム以外に全体像を持たなかったのも後になって尾を引いてる感はありますが。
本の中でも書かれてますが、割と他の銀行でもシステム障害はあるものの、なんでこうなるのかと金融庁が言いたくなるレベルの動きになってしまうのかというのはもう少し深掘りが必要なのかもしれません。
比較的公正に見ようとしていますが、リーマンショックの最中にあったモルガン・スタンレーからの巨額支援要請にみずほ銀行は応じず、対して三菱UFJが受け入れ、後にそれが大きな収益をもたらすことになったと失態のように書かれてました。
流石に、その後リーマンショックの影響で巨額の赤字叩きだしたのを見るとこの判断は正しかったと思いますけどね。
ともあれ企業の中にいて似た事象に遭遇したときにどう行動すべきか教訓が書かれてる一冊だと思いました。


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