「ベンチャーキャピタル全史」によるとベンチャーキャピタルは捕鯨船から始まった
本著はベンチャーキャピタルの走りである19世紀の捕鯨船から直近に至るまでのアメリカにおけるベンチャーキャピタルの歴史を中心にまとめられています。
読み終わると外圧や文化などからアメリカのハイテク企業が発展した理由もよくわかるなという内容でした。
ベンチャーキャピタルは19世紀の捕鯨船から始まった
始まりとして19世紀の捕鯨船で、ロングテールとなる利益配分、エージェントを中心とする組織構造、インセンティブ・システムはそれぞれの影響が補完し合って、生産性の上昇に寄与した。
そして、捕鯨船はグローバル市場を席巻できたので、これをアメリカのベンチャーキャピタルの起業家精神の起源であるという書き方でした。
その後の鉄道から直近に至るまで確かにそれに当てはまるかなと。
ただし、各ベンチャーキャピタルの投資方針は箇条書きしていますが、哲学や分析手法をそこまで詳しく述べたわけではない点は留意が必要です。
捕鯨船後の1950年代から1970年代までの発展過程は興味深いものでした。
主に3つの要因は興味深かったですね。
- リミテッド・パートナーシップという組織形態が採用された。主な理由は税制面の優位性と規制による監視が緩かった。
- ロングテール投資からの利益が明確な形でわかるようになった。
- 政府の政策編区によってベンチャーキャピタル事業環境が変化し、アーリーステージ企業への投資活動が活発化し、リミテッド・パートナーシップ構造が隆盛となった。
割と政策で大きく影響を受けていることと、年金制度の変更で、年金基金から出資約束金が増加して産業が成長したところにアメリカの強さの源泉があるような気がしました。
後は、6章で以下の記載からやっぱり軍事関連の研究を禁止しろとかいうのは大きな間違いだと思いました。
あとは投資の成功例を見ていますと、各業界の最先端の人たちとの人的なつながりが、次の時代の成長企業を見極める羅針盤になっているというのも大きいなと感じました。1967年まで、アメリカ軍はベイエリア企業が製造した集積回路の半分以上を買い上げている。
軍が早期採用者として機能し、製品の質に関する厳格な技術的基準を発注先に課し、さらに軍からの発注をこなしているうちに効率的な資金調達が行えるまでに学習曲線が上昇し、製造コスト、そして当然の帰結として価格も、妥当な水準まで下落した。
軍需が重要な先導役となって、消費者向けの市場も拡大してゆく。
ともあれベンチャーキャピタル発展の過程は他国にも応用可能に思われる部分もありますので(香港でゴタゴタしている中国はマイナスだと感じました)、九州の半導体誘致なども色々と参考になる面がある一冊かなと思いました。


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