アンティ・イルマネン著「期待リターン2 低リターン環境下での投資戦略」
アンティ・イルマネン著「期待リターン」という本がありまして、期待リターンの源泉たるリスクプレミアムを資産クラス(株式、国債、クレジット、オルタナティブ)、戦略スタイル(バリュー、キャリー、トレンド(モメンタム)、ボラティリティ)、リスクファクター(成長性、インフレ、非流動性、テールリスク)という様々な周辺テーマも含めて幅広く議論しています。
考えや傾向に関しては興味深い内容が多かったですが、ネックなのはデータが2011年まででその後10年どうだったのかという点。
期待リターン2-低リターン環境下での投資戦略
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アンティ・イルマネン/鹿子木 亨紀 一般社団法人金融財政事情研究会 2023年02月02日
ここ数十年の棚ぼた的な利益の借りを返さなければならない時期が近づいている。
個人的に印象に残ったことを上げますと以下の通り。
- 資産価格が高騰し利回りが低下することにより、将来のリターンが前借りされている。
- 債券だけでなく、多くの資産クラスは過去に比べて割高である。
- 規律正しさ、謙虚さ、忍耐強さなどよい投資行動は常に好ましいが、厳しい環境ではより重要となる。自分がコントロールできる事柄に集中しよう。
- 低金利かでの利回り追求型投資は歴史的に多くの前例があり、理解はできるが必ずリスクが伴う。
- 資産の傾向として、オルタナティブ投資への配分増、ホームバイアス提言、二分化、投資対象資産の拡大が進んでいる。
- 長期的なコモディティプレミアムは、スプレッドやバリュエーションから予測することはできない。
- 債券の低リターンは広く知られているが、多くお投資家は他の資産についても同じ問題があることにあまり気づいていない。
- ディフェンシブ銘柄が総体的に割高であることは考慮すべきことだが、この懸念はしばしば誇張されすぎている。少なくともファクターの分散されたメニューの一部として選定されるべきである。
- 複数年リターンの後追いは、悪い習慣の最たるものと呼ぶにふさわしい。
各種データはこんなパターンを調べたのかというものが結構ありまして、なかなか興味深いものは別途紹介したいと思います。
で、結局いろいろな資産が割高な中でどう動くかはほんとに難しく、ファンドマネージャーとかはロング・ショートとかも駆使しないと無理ということになるのかなと読んでいて思いました。
個人的にデータ的にディフェンシブとクオリティ関連は評価高めで悪くない戦術なので、継続していきたいなと。
前者は生活必需品+ヘルスケア、後者はクオリティファクター高めな増配あたりがターゲットになるかと。
クオリティファクターのETF買えない環境なのでVIGとかですかね。
ちなみに最後の結論に書かれていた優れた投資原則は一般投資家にも通じるかと思いました。
- リターン源泉を思慮深く選択する(現実的な投資信念を形成してそれを貫く)。
- リスクの大きさを適切に設定する(リスク調整後の期待超過リターンに基づいて)
- 戦略的かつ忍耐つよく投資する(戦術的なタイミングはせいぜい「すこしだけ罪を犯す」に止める)
- 大胆に分散投資する(多くのシナリオで生き残る強固なポートフィリオを構築する)
- 費用対策効果の高い運用を行う(コスト、報酬、税金を考慮する)。
あともう1つガバナンスが上げられてましたが、これは運用実務者向けかと思いました。
ともあれ恵まれた10年を過ごしてきただけに、低リターンになっても地道に資産を積み上げれるよう戦略を練っていきたいと考えさせられる一冊でした。
期待リターン2-低リターン環境下での投資戦略
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アンティ・イルマネン/鹿子木 亨紀 一般社団法人金融財政事情研究会 2023年02月02日


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